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2018 Jul.17
SURUGA Cycle Journal Vol.25

エミリア・ロマーニャ州の観光誘致の取り組み
バイクホテルとグランフォンド

エミリア・ロマーニャ州の観光誘致の取り組み バイクホテルとグランフォンド

イタリアの北東部、イタリア半島のつけ根に位置し、美しいアドリア海に面するエミリア・ロマーニャ州で毎年開催されるサイクリングイベント「Granfondo Squali(グランフォンド スクアーリ)」。素晴らしい景観を楽しみながら走ることができるこのイベントは今年で4回目、5月に開催されました。特別ゲストに世界的に有名なプロロードレーサーのヴィンチェンツォ・ニバリが参加し、多くのサイクリストが楽しみました。

エミリア・ロマーニャ州の観光局からの熱いコールを受け、映画監督でありサイクリストである田中誠さんがグランフォンド(※1)に参戦。本場のグランフォンドと、イタリアでは一般的になってきた「バイクホテル(※2)」を満喫した田中誠さんのイタリア紀行に迫ります。

  • グランフォンドとは山岳コースをメインとした長距離系ロングライドイベント。
  • バイクホテルとは:レンタルバイクがある他に、ガイドによるライドイベントが開催されるなど、ロードバイクやマウンテンバイクなどサイクリストに最適な旅行プランを提供するホテルのこと。

≪それはインスタグラムでの突然の誘いから始まった≫

インスタグラムにある日突然、「イタリアに来て、グランフォンドの大会に参加しないか?」とメッセージが届いた。そんなウマい話は詐欺に違いないと思ったが、招いているのはイタリアのエミリア・ロマーニャ州の観光局。州の観光誘致の取り組みとして力を入れているバイクホテルをぜひ見て欲しいとの要請であった。しかもあの史上6人目の全グランツール総合優勝者である、ヴィンチェンツォ・ニバリがゲストのビッグイベントと知り、自転車仲間のモデルのRENくんを誘い、承諾の返事をした。すると本当にエアチケットの予約番号が送られてきて、しかも宿泊するホテルがレンタルバイクを用意してくれると言う。こちらが用意するのはウエアやヘルメットのほかはペダルとロードシューズだけ。羽田からイタリア・ボローニャ空港へ飛ぶと、迎えの車が来ていて、約100km離れたカットーリカという町に到着。誘ってくれた州の担当者は嬉しそうにハグしてくれたが、考えてみたら彼らも私たちと同じようにこの瞬間まで我々が本当に来るのか確証がなかったのだから、我々を見てやっと安心したのだろう。

≪イタリアは国より地方自治がしっかりしている?≫

ムッソリーニも別荘をもっていた歴史的なリゾート、リッチョーネ
ムッソリーニも別荘をもっていた歴史的なリゾート、リッチョーネ

東西に長いエミリア・ロマーニャ州の東側、カットーリカとリッチョーネという二つの町が今回の滞在地。リゾート地なので夏は観光客でごった返すが、それ以外のシーズンは閑古鳥で閉めてしまうホテルも多いらしく、その解決策として考えられたのがバイクホテル。ホテルがロードバイクをずらりと揃え、事前にジオメトリ(※3)、ステムサイズ(※4)などを伝えておけば自分にぴったりのバイクを用意しておいてくれる。


町にはバイクホテルが何軒もある。設備はホテルそれぞれ異なるので事前に確認した方がよい

ホテルには英語のできるツアーカイドが何人も駐在し、レベルの違うルートがいくつも用意されているので自分の能力に合わせたライドイベントに参加できる。

  • ジオメトリとは自転車のフレームを構成する三角形の辺の長さや角度などのこと
  • ステムサイズとはフロントフォークとハンドルバーをつなぐパイプ状のパーツの長さのこと
ホテルに掲示されたイベントの案内
ホテルに掲示されたイベントの案内

ホテルにはその他にプールやトレーニングジムもあるし、5月でも十分、海に入ることも出来た。


オンシーズンを控えた、いかにもヨーロッパ的なリゾート地の風情

こうしたバイクホテルの取り組みを国内外の多くのサイクリストに知ってもらい、多岐に発信していきたいとの州の担当者の想いから、私たちの他にもノルウェーとデンマークからサイクリストやジャーナリストが招待された。

招待されたサイクリスト、ジャーナリスト
招待されたサイクリスト、ジャーナリスト

≪ニバリがゲストのグランフォンド≫

石畳の古い町をバイクで走ることができて感激!
石畳の古い町をバイクで走ることができて感激!

用意してくれたバイクは驚くほどぴったりで、乗っていて自分のバイクと勘違いしそうなくらい。Fondriest(フォンドリエスト)というブランドのカーボンバイクでシマノの105のコンポーネント(※5)がついていた。友人のRENくんはなんとチームスカイなみにピナレロのドグマであった。初日は走行距離約40kmで足慣らし。とはいえ、特別に州から派遣されたガイドのアレッサンドロは元・NIPPOヴィーニ・ファンティーニの選手で、付いてくれたのはいいけれど、上りで休んでると必ず後ろから背中を押してくれるのでまったく休めなくて参った。


イタリアへ行くなら、ぜひやってみたかったエスプレッソを飲みながらの
「ガゼッタ・デロ・スポルト(ジロ・デ・イタリアのメインスポンサーであるスポーツ紙)」

丘の上の教会の鐘を聞きながら石畳のカフェで休憩したが、今、上がってきたコースがなんとあのマルコ・パンターニ(※6)が練習したコースだそうで、壁には彼の写真が飾ってあった。パンターニはこの州のチェゼナーティコで生まれ、隣町、リミニのホテルで最後を遂げたのだった。

マルコ・パンターニの写真
マルコ・パンターニの写真
  • コンポーネントとは、自転車の主に駆動部を構成する複数の部品のこと
  • マルコ・パンターニとは、プロ通算36勝を挙げたイタリアのヒーローであり、1998年にジロ・デ・イタリア、ツール・ド・フランスの2大ステージレースで個人総合優勝したクライマーとして有名な選手。

二日目は世界最古の共和国、サンマリノまで往復100kmのライドに出た。丘陵地を上り、最高標高は850m、平均斜度は6%くらいだったろうか。グランフォンド本番のコースを一部走り、感覚を掴ませてくれた。いかにもイタリアらしい泉で飲水を補給したり、カフェで休憩したり、そのあとレストランでワインを飲みながら昼食と、日本では到底考えられないライドだった。


イタリア内部にある、世界で一番古い共和国、サンマリノへライド

夜は別のバイクホテルのオーナーから誘われ、海辺のレストランでディナー。夕日を眺めながらスパークリングワインで乾杯し、アドリア海の幸を味わった。イタリアは各州で特産品があるけれどエミリア・ロマーニャは特にグルメな州で、ワイン、チーズ、ハム、バルサミコ酢などが有名である。レストランでのディナーもすべて素晴らしかったし、ワインも美味しかった。


招待してくれたアレクサンダーホテルのオーナーが「魚料理は好きか?」と聞くので
「我々は日本人だよ!」と答えたら納得された(笑)

グランフォンド本番の前日はライドをせずにしっかり休息するつもりだったのに、朝、急に「今からニバリとライドへ行くのですぐに支度をしろ!!」と叩き起こされた。ニバリが限定メンバーのファンライドを承諾したのだ。一緒に走れたのは最初の10分だけで、あとは一瞬にして引き離され、昼休みに再会しただけだが、うれしいツーショットになった。

≪リミニの町は映画監督フェリーニの生まれ故郷≫

フェリーニを記念して改装された映画館
フェリーニを記念して改装された映画館

予定外のライドでかなり疲労したが、夕方からふたつ隣の町、リミニへ電車に乗って出かけた。リミニはイタリアを代表する映画監督、フェデリコ・フェリーニの生まれ故郷であり、幼少期にイタリア映画で育った私としてはこれだけは外せない。彼はリミニを舞台に自伝的な映画をいくつか撮っており、そこに登場する噴水や映画館に行くことが出来て、大満足であった。また、彼の「アマルコルド」という映画は春にこの地方独特の綿毛が舞い飛ぶシーンから始まるのだが、季節がちょうど重なり、町中ほんとうに綿毛がたくさん飛んでいたのも大感激であった。

綿毛は地面に降り積もるくらいであった
綿毛は地面に降り積もるくらいであった

≪グランフォンド奮闘記≫

グランフォンド、スタート直前の我々
グランフォンド、スタート直前の我々

さて、グランフォンド本番だが、当初私たちはメインイベントであるロングコース136kmに参加するつもりだった。しかし私があまりに走れないので、ショートコース79kmに変更させられてしまった(結果的にはそれで充分だったけれど)。

ニバリになにかプレゼントを持ってきてくれと渡航前に州の担当者から頼まれていたので、私は「鮫」と漢字で大きく書かれたTシャツを用意した。ニバリは「Shark」というニックネームがあり、このグランフォンドの名前「Granfondo Squali」の「Squali」はイタリア語でサメという意味なのだ。しかしいつ渡すのかと思っていたらなんと大会スタート直前、出場者が勢揃いしたゲートの最前列でマスコミが彼を取材している時に突入しろと言う。

私はこの日はあえてジロ・デ・イタリアの勝利者ジャージの「マリア・ローザ(※7)」を着ていき、それがウケて大会司会者からインタビューまでされたので皆が道をあけてくれてなんとか最前列までたどり着き、無事に「鮫」のTシャツを渡すことができた。

インタビューで調子に乗って「今日はこのマリア・ローザを守らないといけないのでね」と軽口を言ってウケを取る私
インタビューで調子に乗って「今日はこのマリア・ローザを守らないといけないのでね」
と軽口を言ってウケを取る私
  • マリア・ローザとは、自転車ロードレース「ジロ・デ・イタリア」において、個人総合成績1位の選手に与えられる薔薇色(ピンク色)のリーダージャージ。
鮫のTシャツを受け取ってくれたニバリに感謝!
鮫のTシャツを受け取ってくれたニバリに感謝!

そういうわけでかなり最前列からのスタートになったが、前の方は速い人ばかりで、スタートからかなりの高速レースになった。

時速42km/hで走ってもバンバン追い抜かれ、序盤の平坦20分で昨日の疲れもあって私の足は終わってしまった。ノルウェー、デンマークの記者たち、担当者、ガイドのアレッサンドロ、そしてRENくんたち全員を見失い、あとは一人旅である。たぶん大会を通して、抜かれることはあっても誰一人追い抜かなかったと思う。

若い男性ライダー、女性ライダーはもちろん、上りで超太ったおじさんに抜かれ、激坂でおばさんライダーとバトルして負けた。下りで挽回しようと思い、こちらはグラベルライド(※8)で慣れているのでイタリアの田舎の荒れた舗装路も平気だと飛ばしたつもりだったが、そこでも次々抜かれた。あとで確認したら下りは最高で時速62km/hも出ていた。そうこうしているうちにどうやら最後尾の大会車両らしき車に追い抜かれ、交通規制が解除され、一般車、さらに足切りされた人たちにまぎれてのライドになった。

イタリアのグランフォンドはトップクラスだけでなく平均能力が高く、国民の自転車の歴史が古いと感じた。しかもここで最悪なことに、一人きりになった瞬間、道を間違え、同じ丘を2周していたのだ。だがぐるっとまた元のルートに戻って何もなかったようにコースに復帰したのは不幸中の幸いかもしれない。2周していたことに気づいたのは帰国してGARMIN(※9)の記録を見てからなのだ。おかげでエイドステーションも撤収してしまったらしく、ボトルの水も無くて喉がカラカラだった状態で丘の上の教会に迷い込んだのだが、そこで神父様たちに遭遇したあと、屋台のおじさんがミネラルウォーターを恵んでくれた。無事にゴールできたことも含めて、これは神のご加護だったと信じている(笑)。

ゴールして記念写真を撮ろうとボローニャからの二人に頼まれる
ゴールして記念写真を撮ろうとボローニャからの二人に頼まれる
  • グラベルライドとは、未舗装の道を自転車で駆け回るライドのこと。
  • GARMINとはGPS機器メーカー。サイクルコンピューターとしてナビゲーションの他、速度や標高などの計測もできる。

≪ロンドンにトランジットでひとつぶで二度おいしい≫

こうして5泊6日のイタリア・エミリア・ロマーニャ州ツアーは終了したが、ひとつ残念なことは、日本からは直行便が無いことである。しかしトランジットを利用して、帰りはロンドンで一泊し、おかげでサイクルウエアブランドの「Rapha」の本店や、カフェ&バイクメカニックショップ「Look Mum No Hands!」といった自転車乗り御用達の店にも行けたし、バッキンガム宮殿など名所も巡ることができた。

帰りにロンドン一泊なんて!「ひとつぶで二度、美味しい!」

私の好きな映画「ノッティングヒルの恋人」の舞台、ノッティングヒルにも行けたし直行便が無いことはディスアドバンテージでもなんでもないと思う。

≪帰国してみて ~イタリアの町おこしの真剣度!!≫

バイクホテルを日本のサイクリストへ広め、エミリア・ロマーニャ州でのサイクリングの誘致へ繋げていきたい。その最初として、州の観光局の担当者がインターネットで私を選び、大胆にもエアチケットを送ってきた。予算が潤沢にあれば他のことも出来ただろう。しかし予算がないからといって諦めず、リアリティのある手段を選び、実行することが素晴らしい。イタリア人の彼らと私たちを結びつけたのは両者拙い英語だけなのだから。町おこしを名目だけでなく、義務感でなくやるということはこういう大胆さなのではないかと感じたし、だからこそこちらも意気に感じ、それに応えようと思えた。「形」ではなく「心」の問題だと思う。心を開いてお互い合い通じること、それが本当の「おもてなし」なのではないだろうか。

Information 1

アレキサンダーホテル

イタリア国内の自転車レースに参加するなら、「バイクホテル」の宿泊がおすすめです。来年、グランフォンド スクアーリに参加するなら、たとえば「アレキサンダーホテル」のプランで空港からのホテルの送迎、レンタルバイク、7泊8日3食付、ダブルルームを2人で宿泊すると1人810ユーロ(約10万円)~、だそうです。

Granfondo Squaliグランフォンド スクアーリ
イタリア エミリア・ロマーニャ州

Information 2

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