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2017 Aug.21
Topic on Dream ~夢に効く、1分間ニュース~ Vol.203

幕末に坂本龍馬も撮影。
ガラス板の“湿板写真”で、贅沢な記念撮影を

幕末に坂本龍馬も撮影。ガラス板の“湿板写真”で、贅沢な記念撮影を

スマホの普及などでカメラが身近になった今だからこそ、撮られるだけで“贅沢感”を味わえる写真を。東京の下町・谷中にある「湿板寫眞館(しっぱんしゃしんかん)」は、銀塩フィルムよりさらに古い技法“湿板”の記念写真で話題の写真館です。館長の和田高広さんに、その魅力やこだわりを伺いました。

記念に一枚欲しくなる湿板写真は、今とは違う世界観

湿板写真 Photo:Takahiro Wada湿板写真 Photo:Takahiro Wada
湿板写真は、背後に黒いものを置くと正常な像が浮かぶ。
背後が白っぽい場合は、色が反転したネガのように見える。

「これ、現代の写真です」

和田さんから手渡されたのはキャビネサイズの湿板写真。身近な写真とはかけ離れた世界観、ネット画像では伝わりきらない濃厚な色合いとシャープな写りを見ると、「記念に1枚」というニーズもうなずけます。

「実物を見ると、皆さん驚きますね」

湿板写真は薬液を塗ったガラス板が、いわばフィルム代わりとなる撮影技法。幕末に日本に伝わり、明治時代中期まで盛んだったそう。有名な坂本龍馬が演壇に寄りかかる写真も、実は湿板。なぜこんなに濃厚な色合いに仕上がるのでしょうか?

「僕個人の見解では、薬液の銀が濃いからかなと。昔あった銀の含有量が多いフィルムカメラ用の印画紙も、仕上がりが濃厚でしたね」

湿板写真は、ガラスに塗った薬液が乾かないうちに撮影と現像を済ませます。そこから紙にプリントする技法もありますが、和田さんはガラスそのものが鑑賞用の写真になる「アンブロタイプ」を採用。焼き増しはできないため、完全なる一点モノです。

「アンブロタイプは現像したガラスの背景に黒い布を敷くことで、像が浮かびあがります。プリントされた黒ではなく、布の黒を見るので重く締まった印象を楽しむことができます」

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目指したのは、明治時代の写真館

昭和30年代製「アンソニー」大正生まれの「アンソニー」
の昭和30年代製「アンソニー」のジャンク品を購入後、
作った職人に出会い修理してもらうなど、いくつもの偶然が重なり湿板写真の道へ。
は、和田さんと現在メインで使っている大正生まれの「アンソニー」。

商業写真家である和田さんは、偶然出会った「アンソニー」という古い木製大判カメラを活用するために湿板写真を学び、2015年に全国でもめずらしい湿板の写真館をオープンしました。

「写真館が減っている現状に一石を投じるために、古いカメラと技法で、明治時代の古き良き“町の写真館”を再現したかったんです。スタジオの場所も下町の谷中ですし」

湿板写真を撮影する仲間たちが、新しい機材で高画質を追求する中、写真館を営む和田さんは別の道を模索します。

「『アンソニー』に80~120年前のレンズを組み合わせ、薬液もあえてコントラストが強めになるように調合して、シャープだけど昔の雰囲気がただよう写真にしています」

昔の雰囲気はお客さんたちの強い要望だそう。ただ、少々困ったことも…。

「撮影した2~3カットの中からお客さんが1枚選ぶのですが、写りにムラがある方が昔っぽく見えるようで人気なんです。その写真をネットで見た湿板仲間から『下手になった?』って言われます(苦笑)」

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湿板写真は半永久的。記念日の思い出をいつまでも

湿板写真 Photo:Takahiro Wada湿板写真 Photo:Takahiro Wada
完成した湿板写真は、キャビネサイズなら厚手の紙箱、
八切りサイズは桐の木箱に入って後日受け渡しとなる。

昔っぽい表情を引き出すために、和田さんはシャッタースピードも工夫。

「2秒から20秒まで試して、写る人の表情がもっとも昔の写真に近くなる6秒にしています。動いちゃいけないと固くなった表情に濃厚な色合いが相まって、『本当に昔の人みたい』『自分じゃないみたい』『特別感がある』と喜んでいただいています」

撮影工程は、まず首を器具で固定し、ポーズと構図を決め、ピントを合わせてから薬液を調合。1枚撮るまでにいくつもの過程があり、実際に体験してみると、いざはじまった6秒の撮影も想像以上に長く感じます。

「貴重な体験ができたという声も多いです。撮影で明治時代へのタイムトリップを楽しめるテーマパークだと思っていただければ」

写真は写真師と呼ばれるプロだけが撮っていた時代の技法だからなのか、スローな撮影にテーラーメイドのような贅沢さを感じます。ところで、利用するのはどんな方なのでしょうか?

「レトロな写真なので、武士に扮した歴史好きの方など、和装の方が多いですね」

一方で、結婚記念日や還暦祝いなどに、ちょっとオシャレして記念写真を撮る人も増えているそう。

「湿板写真は、幕末や明治のものもきれいに残っているほど耐久性が高いので、記念日の思い出を長く残せます」

次の記念日には、湿板寫眞館でレトロかつ贅沢な一生モノの1枚を残してみては?

Information

湿板寫眞館

http://lightandplace.com/

フォトグラファー 和田高広

ササキスタジオ勤務後、写真スタジオ「Light&Place」を設立。ミュージックビデオ撮影、ジュエリーおよび美術品の撮影などを得意とする。2015年2月より「湿板寫眞館」を開業。「nipporini」名義にて、アートワークとして光と場所をテーマに展覧会を多数開催。