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2016 Oct.28
Be Unique! ~オンリーワンであること~ Vol.21

『君の名は。』を生んだ〈映画プロデューサー 川村元気〉の仕事術
小説家としての活動が、新たな映画を生み出す鍵に。

『Be Unique!』では、「オンリーワン」な人・企業を訪問。その価値と魅力に迫ります。なぜオンリーワンなのか、どうやってオンリーワンな存在になりえたのか…。そこにはきっと、ほかにはない「夢」や「ストーリー」があるはずです。

今回のゲストは、今夏より上映中の映画『君の名は。』をはじめ、今年は『怒り』『何者』など、数々のヒット作を手がけてきた映画プロデューサーの川村元気さん。2011年には優れた映画製作者に贈られる「藤本賞」を史上最年少で受賞。翌年には、初小説『世界から猫が消えたなら』を発表。同作は本屋大賞へのノミネートを受け、130万部突破のベストセラーとなりました。

現在37歳の川村さんが、常に“新しい”と感じさせるものを生み出し続けられる秘密とは?そして11月にリリースの最新小説『四月になれば彼女は』を書いた理由とは…?

映画づくりのベースは、“観客としての自分に向けて”。
ネタは、手漕ぎボートでひっそりと探す

君の名は。
怒り何者
2016年の作品の一部。上段は、『君の名は。』のスチール。
夏以降、このイラストをどこかで目にした人も多いはず。
中段・下段は左から、『怒り』『何者

26歳で映画『電車男』を初プロデュースして以降、『告白』『悪人』『モテキ』『バケモノの子』などのヒット作を連発し、2016年も数々の作品を世に送り出している川村元気さん。多くの人々を魅了する作品を生む仕事術、そのもっとも根幹にあるのはなんなのでしょうか?

「まず大前提として、僕自身が映画ファン。今でも休みの日には1,800円払って映画館で観ていて。そんなイチ映画ファンとして、本当は観たいけど、まだ世の中にないタイプの映画をつくるようにしています。たとえば、アニメで音楽的チャレンジをした作品があってもいいのにとか、1万円以上のチケットを買って行くクラシックコンサートのように、どっしりと観る映画があってもいいのに…とか考えるんです。

少し前だと『バクマン』、最近だと『怒り』『君の名は。』は、そうやって生まれました。観客としての自分に向けてつくるというのが、僕の仕事のベースなんです」

『電車男』から約10年。川村さんの映画づくりで一環している点は、ほかにも。

「新人の頃は、有名原作がとれずコネもなかった。有名な監督や人気原作は、先輩プロデューサーが根こそぎ持って行ってしまうんです。では僕はどうしたらいいのか…と考えた結果、辿り着いたのがインターネット。

『電車男』のあと、『ソーシャルネットワーク』などネットを舞台にした映画がほかにも登場しましたが、当時は誰もネットに目をつけていなかった。それで、これはひょっとして世界初の試みで面白いかも…と。苦肉の作で考えたところに、宝物があったんですよね」

昨今世間では、人気原作が1つ登場すると多数のメディアがそこに集中し、映画・ドラマ・アニメ・舞台化…と、次々に展開されていくことは周知のとおり。しかし川村さんは、『電車男』のときのように、今も「手漕ぎボートでネタを探している」と言います。

「ソナーを使うのではなく、映画好きの自分が感じる『次はこれが観たい』という気分と周囲の人たちが発する言葉の断片を頼りに、魚がいそうな場所にひっそりと糸を垂らしている。すると時折、大きな魚が釣れるんです」

仕事を覚えた30代。そこで感じた停滞感は
小説家として新人に戻ることが、打開してくれた

川村さんの著書の一部。手前は、対談集『仕事。
川村さんの著書の一部。
手前は、対談集『仕事。』(集英社)。
ほかに、小説『世界から猫が消えたなら』(マガジンハウス)、
対談集『理系に学ぶ。』(ダイヤモンド社)、
妄想集(!?)『超企画会議』(KADOKAWA)、
第2小説『億男』(マガジンハウス)。

映画プロデューサーとして活躍してから、小説家としても活動をはじめた川村さん。2012年出版の小説『世界から猫が消えたなら』を皮切りに、さまざまな作品を手がけています。30代で新たな活動をはじめた理由は、あるのでしょうか?

「10年ほど仕事をすると、1+2は3で…という仕事のやり方を覚える。そこから、2つに大きく道がわかれると思うんです。1つは、それまで覚えた方法で、ひたすら仕事をこなしていく人。もう1パターンは、足し算からかけ算へと前進させたくなる人。

僕は、大体こうすれば70~80点の映画がつくれる…というような気分になってしまったときに、これはまずいと思って。もう一度新人扱いされるようなことをやろうと思い、小説を書くことにしたんです」

いざ小説を書き始めると、「ここで音楽を鳴らせたら…。ここは俳優の表情が1つあれば、多くを語れるのに」と映画ならではの表現を再確認することに。

「それでつくったのが、音楽を中心に据えた『バクマン』『君の名は。』、俳優のポテンシャルに着目した『怒り』なんです。映画でしかできないものを手がけるようになったという意味で、小説というチャレンジは大きかったですね」

インタビュー中の川村さん

川村さんが感じた仕事での停滞感は、宮崎駿監督、坂本龍一さんはじめ、さまざまな世界の巨匠との対談をまとめた著書『仕事。』のテーマともなっています。

「ビジネス書を読むと、『夢を持て』なんて書いてありますよね。でも実際は、大半の人が、『コレが夢だ!』と決めてそこに向かうわけじゃない。色々なことに挑戦してみて、あとから『自分はこういうことがやりたかったんだ』と気付く。僕は、それで正しいと思うんです。

だから、先輩の話を聞くのが一番いいかなと。自分の憧れている人たちが、自分と同じ年齢でどうもがいてきたかを聞きながら、『これは自分とは違う』『これは面白い…』と考える。そのなかで、答えが見えてくると思ったんです」

巨匠たちの話を聞きながら、「やっぱりみんな、仕事に飽きた時期があるんだ」と感じたという川村さん。同時に、こんな気づきがあったと語ります。

「グラフィックデザイナーだった横尾忠則さんは“画家宣言”をして、自分の路線を無理矢理変えています。脚本家の倉本聰さんは、ちょっと勢いづいてしまって大河ドラマを降板になり、北海道移住を迫られる状況に(笑)。でも、たとえ好まざる状況でそうなったとしても、路線を変更することは必ずプラスに転じている。これはすごい発見でした」

11月には、小説第3作『四月になれば彼女は』をリリース。
映画だけを続けていては、新しいものは生まれない

インタビュー中の川村さん

今年は、11月4日に3作目の小説『四月になれば彼女は』が文芸春秋からリリース予定となっている川村さん。同作のテーマについて伺うと…。

「1作目の小説『世界から猫が消えたなら』を書いたときに、死は人間が永遠に解決できないテーマだなと思いました。この先どんなに医療が発達しても、おそらく死ぬことは避けられない。じゃあ次はなにを書こうと考えて、お金を題材にしたのが、小説第2 作『億男』。

そして、もう1つの解決できないものが恋愛感情。大の大人が恋愛でおかしくなるし、円満な夫婦関係に見えても密かに問題を抱えていたり…。人間の力では、どうにも解決できないものだなと思って」

ところが、恋愛小説を書こうと決めて調べ始めると、大人向けの恋愛小説や映画・ドラマが、昨今まったくヒットしていないことに気づいたそう。「これはどういうことだ?」と思った川村さんは、知り合い100人へ取材をすることに。しかし、そこでさらに驚くべき事態に直面したとか…。

「同年代の女性に聞くと、『今の恋人は、結婚相手じゃない』とか『旦那のこと好きかわからない』というような話ばかりが出てきました。でもその人の10年前の話を聞いてみると、大恋愛をしている。同じ人なのに、10年で恋愛感情がごそっと抜けているんです。

それで小説では、10年前の “恋愛感情を持っていたその人”と、現在の“恋愛感情のないその人”を交互に書くことにしました。すると、その2つの差分が恋愛感情ですよね。

自分が今どっちにいるんだろう、どっちにいたんだろう…ということを確認しながら読んでもらえたらと思っています」

また、映画に欠かせない要素が盛り込まれているのも、この小説の見どころ。登場人物の旅先として、過去に川村さんが訪れたボリビアのウユニ塩湖やインド最南端のカニャクマリなどの景色が登場。タイトルは、サイモン&ガーファンクルの曲名「四月になれば彼女は」からきています。

インタビュー中の川村さん

インタビュ―のラスト、停滞感を脱した今でも、映画プロデューサーと小説家、両方に取り組む理由を伺うと、こう教えてくれました。

「『仕事。』では谷川俊太郎さんとも対談していますが、ずっと谷川さんをうらやましいと思っていたんです。詩人だけれど、絵本も広告のコピーも書く。だからこそ、ずっと詩人をやってこれたんだろうな…と。

たとえば、ファッションは映画やミュージシャンにインスパイアされて生み出される。映画も同じ。自分のなかや同じジャンルから出てくるものは限られているから、1つのことだけを続けていては限界がくる。外からヒントや力を借りてこそ、新しいものが生まれると思うんです」

川村さんサイン
『仕事。』(集英社)にサインしていただきました。
こちらはd-laboミッドタウンでお読みいただけます。

撮影:伊東武志

Information

川村元気さん最新小説『四月になれば彼女は』
四月になれば彼女は

精神科医・藤代は、婚約者との結婚を1年後に控えていた。順調に見えるふたりだが、実は恋愛感情は長らく希薄だという問題が…。そんなある日、藤代のもとに、大学時代の恋人・ハルから唐突に手紙が届く。“天空の鏡”があるウユニ塩湖から。そこには、現在のハルの恋模様とともに、過去の藤代との別れ、彼女の知られざる過去が綴られていた。

その後も世界の旅先から、ハルの手紙が送られてくる。時を同じくして藤代の婚約者・弥生、その妹の純、職場の後輩・奈々の恋愛感情にも異変が起きはじめ…。失った恋に翻弄される12か月が始まる。
「これは僕が経験した、現代における愛の多様さと残酷さ、未来への希望を綴った物語です」と川村さん。

「小説では、恋愛感情を持っていた過去と、恋愛感情のない現在を交互に描いています。自分が今どっちにいるんだろう、どっちにいたんだろう…ということを確認しながら読んでみてください」

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