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2016 Jul.28
Topic on Dream ~夢に効く、1分間ニュース~ Vol.143

どの席がいいの?マナーは?
初心者必見、歌舞伎の楽しみ方を徹底レクチャー

歌舞伎 役者

最近は、TVドラマやバラエティー番組でも歌舞伎役者の姿を見る機会が多くなりました。実物の彼らに出会える歌舞伎に行ってみたいけど、敷居が高そうと躊躇している人も多いのではないでしょうか。そんな歌舞伎初心者のために、歌舞伎独特の仕組みやマナー、初めての人にもオススメの席や演目を、演劇評論家の中村義裕さんにたっぷりと伺いました。

歌舞伎には独特の興行形態と席がある

歌舞伎は400年以上の歴史を持つ伝統芸能だけあって、受け継がれてきた独特の文化があります。昼の部と夜の部の2部構成で行なわれる興行形態もその一つ。

「昼の部はだいたい午前11時に開演して3本か4本ほどの演目が上演され、午後3時~3時半位に終演。同様に夜の部は午後4時半から始まり午後8時半~9時に終演します。ただ、この2部構成ですと上演時間が4時間強と長丁場な上、日中仕事のある方々はなかなか観られません。そこで、先年亡くなった中村勘三郎さんらが中心となって、東京の歌舞伎座では20数年ほど前から3部制という試みが始まりました。現在は毎年8月(※)のみ3部制興行として上演時間を短くし、第3部が午後6時15分から始まるようにして仕事帰りの人にも歌舞伎が鑑賞しやすいようになりました」

  • 歌舞伎座では今年から6月も3部制で興行

3部制での興行は、歌舞伎デビューをする良いきっかけになるかもしれません。

歌舞伎はチケットも特徴的です。歌舞伎の席は、一般的に以下のように分かれています。

■一等席=18,000円

1階の前から3分の2位までと2階の前の方。

■二等席=14,000円

1階の後ろの方と2階の後ろの方。

■三階A席=6,000円

3階の前の方。

■三階B席=4,000円

3階の後ろの方。

■1階桟敷席=20,000円

これが歌舞伎の最も特徴のある席。1階の両脇にある掘りごたつのボックス席。舞台を真正面から見ることはできないが楽な姿勢で見られる最も高い席。

種類がありすぎて一体どの席を選べばよいか迷うところです。初心者にお勧めの席はどこなのでしょう。

「初心者の人がいきなり15,000円以上の一等席で観てしまうと、その分の元をとらないと損だとすべてを理解しようとして、結局疲れて終わってしまったなんてことになりかねません。初めての方は一度3階でご覧になってはいかがでしょう。舞台からは遠いですが上から見下ろす形で全体を俯瞰的に見ることができ、建物や背景など歌舞伎の醍醐味である豪華絢爛な舞台を楽しめる席ですよ」

これに加えて、歌舞伎座には好きな演目1つだけを観られる「一幕見席(ひとまくみせき)」という当日券があります。値段は1,000~2,000円と格安で上演時間も短いため、初心者向けだという方もいますが、中村さんの意見は異なります。

「ここはある程度歌舞伎を見慣れてからの方がいい、というのが私の意見です。というのも一幕見席は4階という一番遠い席であり、また席数も少なく予約ができないので当日チケットを買うのに並ばなくてはいけないんです。人気がある公演では上演時間と同じくらい並ばなくてはならないことも…」

歌舞伎座

歌舞伎を見に行くのに下準備は必要?

多くの人が歌舞伎を見に行くのをためらう理由には「台詞の意味が分からないのでは」という心配もあることでしょう。事前に演目のあらすじを読んでおくなど、やはり下準備は必須なのでしょうか?

「私は特に下準備は必要ではない、と思います。歌舞伎は難しいという人に申しあげているのですが、『理解しようとする』から大変なのです。ただ感じればいい。時代が違うので分からない言葉も出てきますが、日本人が日本語でやっている芝居です。役者の衣装が綺麗だとか、随分立派な大道具だとか、初めて聞くけど三味線の音も悪くないな。そんな風にふわりふわりと歌舞伎の世界観に浸りつつ、何かを感じ取れればそれでスタートは充分だと思います」

確かに、最も大切なのは“楽しむ”という気持ちなのかもしれません。内容をきちんと理解したい方はイヤホンガイドを借りるのも一つの方法です。イヤホンガイドは、舞台の進行に合わせて役者の名前や物語の歴史や背景を音声ガイドで解説してくれるもの。

歌舞伎を見るときに知っておきたいマナーは?

そうはいっても、初めて歌舞伎を見に行くとなったらやはり緊張してしまうもの。歌舞伎独特のマナーはあるのでしょうか?

「歌舞伎だからこうしなさいということはなく、映画館や劇場での一般的なマナーと同じと考えていただいて構いません。むしろ、江戸時代には上演中もお客さんはお弁当やお菓子をつまみ、お酒を飲み、タバコを吸いながらお芝居を観ていたほど緩やかな世界でした。現在でも、休憩時間に座席でお弁当を食べても文句を言われることはありません」

歌舞伎というと着物姿で見に行くイメージがあります。実際にドレスコードはあるのでしょうか?

「特にありませんよ。昭和30~40年代くらいまでは上流階級の人たちが歌舞伎座でお見合いをしていた風習があって、現在でも和服で着飾って行かれる方がいらっしゃいます。それはそれで素敵ですが、気軽な感覚でジーパンにポロシャツでも全く問題はありません」

もともと歌舞伎は江戸時代の庶民の娯楽だったそうです。歌舞伎のことをよく知らずに「敷居が高い」と決めつけてしまっていたのかもしれませんね。

歌舞伎の魅力ベスト3

子どもの頃から芝居が大好きで、これまでに6,000本を超える芝居を観劇してきた中村さんに、歌舞伎観劇の楽しみを3つ教えてもらいました。

魅力① 生の舞台の迫力を味わえる

「なんといっても迫力ある生の舞台が観られること。これは映画やドラマでは味わえないことです。歌舞伎は大道具にしても衣装にしても非常に手間を掛けて作られていますし、舞台転換の時の迫力ある仕掛けなど、実際に行った人にしか味わえない臨場感こそが最大の魅力だと思います」

魅力② 役者によって芝居が変わる

「歌舞伎では何百年に渡って同じ演目が繰り返し演じられてきましたが、同じ演目でも配役が変われば全く違ったものに見えてくるんです。これは落語と一緒だと思います。落語は落ちが分かっていて話の筋を知っていても、噺家さんによって全然違いますよね。この役をあの人はどう演じてくれるんだろうとか、この人にあの役を演じさせるとどんな感じになるんだろうなど、役者が変われば芝居も変わるのが歌舞伎の魅力の一つです」

魅力③ 好きな役者を追いかける楽しみ

「初心者の方に歌舞伎を好きになってもらう方法として、好きな役者さんを探していただくことをオススメしています。自分のお気に入りの役者が見つかれば、この人は次に何に出るのだろうとか、一緒に出ているこの人もいいなとか、そこから興味が広がります。そうやってファンになった役者を追いかけながら、自然と歌舞伎の世界に詳しくなっていく楽しさがあると思います」

歌舞伎 化粧

初心者にオススメの3演目

これでもう予備知識はバッチリですね。最後に、中村さんに初めての人にもオススメの演目を3つ教えてもらいました。

オススメ演目①「俊寛」(しゅんかん)

「『平家物語』を題材に書かれた作品です。「俊寛」はお坊さんの名前です。平家打倒の企てをしていたのがばれて鬼界ヶ島に島流しにされた俊寛らに、罪を許して都へ帰すという赦免の船が来るのですが、俊寛だけが船に乗れないことがわかります。そこから色々なドラマがあり結局、俊寛のみが島に残るという結末のお芝居です。この作品は上演時間が1時間15分ほどなので長丁場ということもないですし、ストーリーがドラマチックで海外公演の初期の頃から良く上演されていた作品です。つまり言葉が通じなくても楽しめるくらい分かりやすいお芝居なんです」

オススメ演目②「京鹿子娘道成寺」(きょうがのこむすめどうじょうじ)

「女形舞踊は歌舞伎でなくては観られませんので、舞踊の代表作を一本挙げておきたいと思います。この作品は、1時間以上を一人の女形さんが何度も衣装を替えたり、持っている道具を替えたりしながら踊り抜くお芝居で、とても華やかです。音楽的にも優れ、長唄もとても良い曲がついていますし、舞台も華やかな作品なので楽しめると思います」

オススメ演目③「勧進帳」

「いまの九代目松本幸四郎さんが1,100回以上も弁慶役を演じている歌舞伎の人気演目で、聞いたことある方も多いと思います。これも分かりやすくて初心者にオススメの作品です。この作品は様々な役者さんが演じられるので比較する楽しみもあります。主役の弁慶が機転を利かせて主人である源義経の危機を救うというお芝居なのですが、その緊迫したストーリー展開や科白を朗々と聞かせる見所がこの作品にはありますね」

3作品はどれも上演時間が1時間15分ほどと短めで、初心者でも飽きにくいとのこと。

リラックスした気分で、今年こそ憧れの歌舞伎デビューをしてみませんか?

文・関 淳一