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2015 Aug.28
Be Unique! ~オンリーワンであること~ Vol.15

〈植物店「叢-Qusamura-」・小田康平〉が、
“いい顔してる植物”を発信するワケ

“いい顔してる植物”と小田康平さん

『Be Unique!』では、「オンリーワン」な人・企業を訪問。その価値と魅力に迫ります。なぜオンリーワンなのか、どうやってオンリーワンな存在になりえたのか…。そこにはきっと、ほかにはない「夢」や「ストーリー」があるはずです。

今回お話を聞かせてくれたのは、広島県の植物店「叢(くさむら)」の店主・小田康平さんです。現在、国内外での展示やライフスタイル誌などで大活躍中の小田さん。「叢」の提供する植物や小田さんの記事を見たことのある人も、多いのでは?そんな人気店「叢」がオープンしたのは、3年前の2012年。一貫して発信してきたのは、ストーリーを持つ“いい顔してる植物”です。そんな新しい植物の価値観を見つけ出した背景と、最新の活動について伺いました。

植物の造形美を求め辿り着いたのは、
“いい顔してる植物”

広島を活動拠点とする小田さんの実家は、生花店。20代で植物の美しさに目覚め実家を継いだものの、興味はだんだんと、すぐに枯れてしまう生花から土つきの植物へと移っていったといいます。そんなある日、「植物は、アートに負けないほど美しい」と信じていた小田さんに、衝撃を与える出来事が…。

「サボテン業界の先駆者・羽兼直行さんが、静岡県のヴァンジ彫刻庭園美術館でサボテンを展示したことを知って。美術館にサボテンが展示されるなんて…と驚きつつ、『僕がやりたかったのは、植物の価値を高めること、それを伝えることなのかもしれない』と感じました。頭のなかにあったイメージがクリアになったというか。羽兼さんと活動の方向性は異なりますが、自分がしたいことを形にする、きっかけのひとつになりましたね」

その後も日々、植物の造形美を追求するなかで、“いい顔してる”植物という独自の価値観に辿り着いた小田さん。“いい顔”とは、言い換えれば味わいのある風貌のことだと、話してくれました。

「同じ種類の植物でも、強烈な日照りなど厳しい環境で育った個体は、たくましく貫禄のある風貌をしている。そういう生きざまを感じさせる植物に、年齢を重ねた人々に対するのと同じように敬意を表して、“いい顔”と表現しているんです」

現在、小田さんが主に扱っているのはサボテンです。これもまた、“いい顔”を求めたがゆえ。サボテンは非常にゆっくりと成長し、小田さんいわく「天然の盆栽」。小さなカラダに長年の歴史を蓄え、飾りやすさと味わい深い風貌を、兼ね備えているのだそうです。

柱サボテン柱サボテンの突然変異種
は、高さ50~60㎝、7~8年目の柱サボテン。
大量生産型の農家は、サボテンが伸びると上部をカットし、
それを植え替えて、新しいサボテンを生み出す。
これは、それらを生み出してきた親木。
複数の切り跡からは、何度もカットされながらも、強い生命力で生き抜いてきた様がうかがえる。
ちなみに自然のままに成長していれば、現在は2m程度になっている品種。

は、団扇(うちわ)サボテンのように見えるが、柱サボテンの突然変異種。
突然変異種は高値で売れるため、こちらにも、
農家による株分けのための切断面が。
その上に立派なふくらみがあるのは、カットされた後も成長し続けた証拠。
白雪丸(しらゆきまる)般若(はんにゃ)
は、「白雪丸(しらゆきまる)」と呼ばれる品種。
本来はその名のどおり、グリーン×真っ白なトゲのコントラストが美しい品種だ。
この個体は、農家の隅で何年も忘れられていたために、
一部が枯れ、侘び寂びを感じさせる風貌に。

は「般若(はんにゃ)」という品種。通常は放射状に広がるはずの羽根のような部分が、ねじれているのが個性的。
過去に、日照り・水不足などのストレスにさらされたことで、このような造形となっている。

植物の背景にあるストーリーも、
ヴィジュアルとともに楽しんで欲しい

「叢」開店前からサボテンの味わい深さに惹かれた小田さんは、農家から直接、サボテンの仕入れをするように。そのわけは、「市場に並ぶ植物は、一律の美しさを求めて規格品として出荷されたもの。そういう植物には、個性がない。自分が本当に美しいと思うものを選び出したかった」ため。しかし小田さんの選ぶユニークなサボテンを見た農家の人々は、「こんなものに価値があるの?」と首をかしげたそうです。

「『絶対これがカッコいい』と信じて店に並べましたが、観葉植物好きやサボテン愛好家の方々にすら、理解されなかった(笑)。でもある日、世界的に有名なアートコレクターの方が、ひょっこり店を訪れて。サボテンを見て、さらに僕の話を聞いて、『君の価値観は、面白いね』といってくれたんです」

この出会いが、自分の店「叢」を出す決意を固めさせたといいます。しかし、「開店4か月目までの合計売り上げは、たったの50万円。資本金なんて一瞬で消えました(笑)」という厳しいスタートだったとか。それでも「共感してくれる人がいるはず」と信じる小田さんは、広島を飛び出し、東京の恵比寿のギャラリーでサボテンの展覧会をすることにしました。

「その会場に足を運んでくれたのは、写真家、画家、彫刻家、ギャラリーのオーナーなど、アートに深く関わる方々。それまで、僕の周囲にいなかったタイプの人たちでした。彼らが興味を持ってソーシャルメディアで発信してくれて、現在の仕事につながる機会を、たくさんいただきました」

これが契機となり、数々の展覧会の開催、多数のライフスタイル誌への登場…と、小田さんの活動は一気に拡大。世の植物ブームの追い風も受け、最近では、国内のみならず海外からのオファーも増えているといいます。

「植物ブームの背景の一つには、震災の影響もあると思います。人間が生み出してきたものへの信頼がゆらぎ、自然やアナログへの欲求が高まったのでは。今は、モノにストーリーを求める風潮もありますよね。例えば料理や洋服に対しても、大量生産ではなく、背景に物語のある一品ものを求める風潮を感じる。『叢』は、どんな環境でどう成長したのかというストーリーも含めて、植物の価値を提案しています。植物にもビジュアルだけでなく、そういう楽しみ方があっていいと思うんです」

展覧会「持塚三樹と植物 Around the Sun」の様子展覧会「持塚三樹と植物 Around the Sun」の様子
展覧会では、美術家とのコラボレーションをすることも多数。
画像は、2013年に東京・三宿のカフェ「SUNDAY」で開催された
展覧会「持塚三樹と植物 Around the Sun」より。
持塚三樹氏の彫刻・絵画と植物の対話が図られた展示。
(画像提供:叢)

「叢」4年目の今年、展覧会でのコラボが
新たな刺激を与えてくれた

展覧会「日常、あるいは非日常の風景生物×静物 叢/小田康平・佐藤貢」の様子
展覧会「日常、あるいは非日常の風景生物×静物 叢/小田康平・佐藤貢」の様子展覧会「日常、あるいは非日常の風景生物×静物 叢/小田康平・佐藤貢」の様子
名古屋のギャラリー「feel art zero」にて行なわれた、
「日常、あるいは非日常の風景生物×静物 叢/小田康平・佐藤貢」」より。
(画像提供:叢)

「叢」開店から4年目の今年も、小田さんはさまざまな活動を行なってきました。とくに印象深かったのは、5~6月に名古屋の美術家・佐藤貢氏とコラボレーションした展覧会「日常、あるいは非日常の風景生物×静物」とのこと。今までとは一線を画す内容になったそうです。

「佐藤さんは、日常生活から流れつく漂流物、つまりゴミを使って創作を行なうアーティスト。今回は、履き古された靴や昭和10年代の本などを使って、サボテンの鉢をつくってくれました。それらひとつひとつに合うサボテンを具体的にイメージし、たった1つのサボテンを探し求めて農家を何軒も回り、作品を完成させていったんです」

「叢」では、普段から陶芸作家の鉢に合わせてサボテンを植えているものの、「ここまで鉢とサボテンの組み合わせに苦労したのは、はじめてかもしれない」と小田さん。

「今まで、“蓄えた長い年月のストーリー”をサボテンだけで表現していたわけですが、今回は鉢も独自の歴史を持っていた。非常に完成度の高い展覧会になりました。また、新しい気づきも。過去にガラスの器を選んだことがなかったのですが、古びた一升瓶の鉢に植えてみたら、意外によかったんです。今後は、ガラス製の鉢で植物を見せる方法についても考えていきたいと思っています」

展覧会「familiar×Qusamura 植物のあたらしい可能性」の様子
展覧会「familiar×Qusamura 植物のあたらしい可能性」の様子展覧会「familiar×Qusamura 植物のあたらしい可能性」の様子
ファミリア銀座本店内イベントスペース「CUBiE」 にて行なわれた展覧会、
「familiar×Qusamura 植物のあたらしい可能性」より。
(上段画像提供:叢)

また、「植物のあたらしい可能性」をテーマに行なった4~5月の展覧会も、その名のとおり、サボテンの新たな魅力を伝える展示となったとか。展示された約100点のサボテンは、すべてが接ぎ木になったもの。自然に人の手が加わることによって生まれる造形の面白さを、見せたかったのだといいます。

「接ぎ木は本来、上に乗せたサボテンの成長を早めるために使う技術。商品として出荷するときには、下側が切り取られてしまうので、接ぎ木の状態のまま一般の人々の目に触れることは、ほとんどないんです。実は以前にも、ロサンゼルスで接ぎ木の展示をしたことがあるのですが、そこから時間差で、日本でも注目されている感覚があります。今になって『叢』のまわりでは、ちょっとした接ぎ木ブームが起きていますね」

次の3年では、
自ら生み出した植物を発信していきたい

サボテンと小田さん

自分の審美眼を信じ、たった3年の間に、日本のみならず世界に向けて、新たな植物の価値基準を広めてきた小田さん。今後は、植物の生産にも力を入れたいと考えているそうです。

「今までは農家から、偶然生まれたユニークなサボテンを調達していました。でも今年の3月に、畑を手に入れて。これからは成長の過程から『叢』として植物に関わりたいと思っています。植物って、すごく生命力が強い。暑さや水不足、上に伸びられない…など、一定の負荷をかけることで、見た目も本質もより力強いものに育つし、個々の力も発揮されやすくなるんです。2~3年後にはきっと、個性溢れるサボテンが出来ているはずですよ」

そして、インタビューのラスト、“いい顔してる植物”にこだわる理由を、改めて、こう語ってくれました。

「いろんなものを集めるコレクターさんがいるけれど、やっぱりみんな、最終的には自分しか持っていないものを欲しがるんですよね。それを突き詰めていくと、鉱物や植物に行きつくことが多いんです。とくに植物は生きているから、自分が手にしてからも変化していきます。『叢』は、個性ある一品ものを提案する。植物のあたらしい持ち主が、それをさらに“ひとつしかないもの”にしていってくれたらといいな、と思っているんです」

個性豊かなサボテンたち

撮影・蟹 由香

撮影協力・Reno*Reno Tokyo

Information

小田康平氏/叢

1976年、広島生まれ。「叢」店主。多肉植物の販売・展覧会のみならず、アーティストとのコラボレーションや人気施設の植栽など多方面で活躍している。今年出版された、小説家・山崎ナオコーラ氏著の『ボーイミーツガールの極端なもの』(イースト・プレス)では、物語に登場する植物の提供、植物エピソードの監修を担当。

Qusamura 叢(くさむら)ロゴ
「見たことない サボテン・多肉植物」(二見書房)サイン
小田さんがセレクトした植物の写真集
「見たことない サボテン・多肉植物」(二見書房)にサインをいただきました。
この著書は、d-laboミッドタウンで閲覧できます。
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