d-labo

SURUGA d-labo. Bring your dream to reality. Draw my dream.

特集

特集TOP

2015 Aug.14
Dream & Passion ~輝ける女性たちの肖像~ Vol.18

37歳のトップアスリート!〈スカッシュ選手 松井千夏〉が輝き続ける秘密

松井千夏さん

自分らしく活き活きと働く、素敵な女性たちを紹介する「Dream & Passion」。今回のゲストは、スカッシュ選手の松井千夏さん。2001年に全日本スカッシュ選手権大会で日本一に輝き、以降13年に渡り、日本のスカッシュ界のトップに君臨。そんな松井さんが、スカッシュにハマった経緯とは?そして37歳になった現在も、トップアスリートでいられる理由とは?現在、2020年開催の東京オリンピック追加種目の候補になっているスカッシュのルールや魅力を交えて、お届けします。

スカッシュは、自分にとって喜怒哀楽を表現できる場所

スカッシュをする松井さん

松井さんは、今年でスカッシュ歴20年、プロのプレイヤーとしては13年目とか。20年前は、現在よりもスカッシュの知名度は低かったと思います。まずは、はじめた経緯を教えてください。

松井大学のサークルがきっかけです。それまでは小学生から11年間、バレーボールをやっていました。体育が大好きで、体育の先生になりたくて、日本体育大学に入ったんです。

バレーボール部からスカッシュサークルに。意外な選択です。

松井大学でバレーボールを続ける気はなかったんです。身長が157センチと低かったし、「バレーはやり切った」という思いがあったので。それで最初は、小学生のときから趣味でやっていたテニスをやろうと思いました。でも体育大学のテニス部って、一流の選手として活躍してきた人が大勢いるんです。ここに入ったら、球拾いで終わるな…と(笑)。そんなとき、サークル紹介の冊子で、スカッシュをしている写真を見つけ、ラケットを使うスポーツならと、参加してみることにしました。

スカッシュのラケットとボール
スカッシュのラケットとボール。
ボールは直径4センチ。卓球やゴルフのボールと同じ大きさだ。
ゴム製で、中は空洞になっている。

スカッシュは、ラケットとボールを使う競技ですが、テニスとの違いは大きいですよね。

松井最初に驚いたのは、ボールが全然弾まないこと。上から落とすとボテっと転がるだけで、バウンドしないんです。スカッシュの試合前には、対戦する選手2人が、ボールを打ち合って温めます。そうすると中の空気が膨張して、はじめて弾むようになるんです。

スカッシュのコート
コートの床面積は、幅6.4×奥行き9.8メートル。
四方は、壁に覆われている。
対戦する選手2人は同じコートに入り、
前面の壁(松井さんの背中側)に当てるよう、交互に球を打ち合う。

テニスは対戦する相手とネットを挟んで対面しますが、スカッシュは選手同士が横に並びますよね。壁を利用して競技をするのも、珍しい点だと思います。

松井スカッシュでは、自分が壁に打って戻ってきた球を相手が打ち返せないと、得点を得ることができます。なので、相手が打ち返しにくい場所にボールが戻るように、狙うんです。たとえば四方のコーナーや壁際にボールがくると、壁にラケットがぶつかってしまい、打ち返せない。最初はなかなかうまくできなかったですが、そういう「悔しい!」から、火がついて(笑)。試合で勝てるようになると、どんどんハマっていきました。

さすがアスリート、負けず嫌いなんですね…!

松井そうみたいですね(笑)。スカッシュを進路の選択肢として考え出したのは、3年生の頃。学生の大会だけでなく、国内の一般の大会でもいい成績が出せるようになってきて、もっともっと上を目指したくなったんです。

高校までは、団体競技のバレーボールをなさっていた松井さんですが、スカッシュは1人で戦う競技。面白さに違いはありましたか?

松井個人競技は、いかに自分自身がコントロールできるかが重要。自分のダメな部分を見つめ直せました。練習した分だけ自分に返ってくるし、勝ったときの喜びも大きいですね。バレーボールをしていた頃は、試合で負けたときも、先生のことやチームのメンバー、試合に出られない子たちのことなど、周囲のことばかり考えてしまい、感情的になれませんでした。いいたいことも、いえなかった。でもスカッシュでは、喜怒哀楽を感じることができる。そこが魅力です。

若い選手の目標であり、越えられない存在であるために

いままでとこれからについて話す松井さん

卒業後、2001年の全日本スカッシュ選手権大会で優勝し、翌年にプロ登録をした松井さんですが、そこから13年たった今、思うことはありますか?

松井ここまで続けているとは、全く想像しませんでした!続けてこられた理由のひとつには、先に話したような、バレーボールで経験できなかった感動をスカッシュで味わっているというのがあると思います。

20代と現在で、戦い方は変化しましたか?

松井以前は勢いにのれば、実力差のある相手にも勝てるけど、自分に流れがないときは、ボロボロでした。30歳を超えてからは、以前のような勢いはないけれど、自分のゲーム展開ができるようになり、大きく崩れることはなくなりましたね。自分では、メンタル面はとても弱いと思っているんですが、まわりからは、強いっていわれます(笑)。

今日松井さんとお会いして、とても謙虚だし、冷静に周囲のことまで考えながら、お話しなさる方だと感じました。精神的な安定感のほかに、心がけていることがあれば、教えてください。

松井天才的センスがある人よりも、努力を積み重ねる人のほうが、選手生命は長いのかもしれません。不器用だったり、勝ちたい気持ちを強く持っている人ほど、練習の量・質を極めていくし、その結果、勝てる回数が多い気がします。私はセンスがあるわけではないので、練習でカバーしなくちゃと思っています。

そのモチベーションを保ってきたことは、すごいことだと思います。

松井仲間やライバル、いろいろな人たちとのつながりがあったからこそです。自分がチャンピオンになりたいと思ったときには、越えなければいけない相手がいて。実際にチャンピオンになったら、今度は下から力をつけて登ってくるジュニア選手がいて。彼らの目標となり、かつ越えられないようにするためには、自分も強くあり続けなければいけないんです。

個人競技でもやはり、人とのつながりが刺激を与えてくれるんですね。ファンの方々からも、パワーをもらうことはあるのでしょうか?

松井「若いときは強くて当たり前だけど、今のように30代後半になっても、トップでいることがすごい」といわれたことがあります。「松井さんが日本のスカッシュ界を牽引しているんだから、頑張ってね!」って。そうやって応援していただくと、「ああ、やっててよかったな」と思いますね。20~30代で積み上げてきたことが、評価されているのは、とてもうれしいです。

後輩には、アスリートとして大切なことを伝えていきたい

後継の育成について

今年も複数の試合に出場なさる松井さんですが、今後の夢を教えてください。現在の立場は、ほかの選手達を引っぱっていく…という感じなのでしょうか?

松井いえ、わたしはぐいぐい引っぱっていくのは、あまり得意ではないです。例えばチーム戦で一緒に戦う子たちにも、いかにもサポートっていうようなことはしません。それよりも、コートに長くいて、一緒にスカッシュをしたり、ごはんを食べたり、たわいもない会話をしたり…。そういうことを通して、個々のいいところを伸ばしたり、コンディションをコントロールする手助けになれたらと思っています。

「高校卒業時に教師になりたかった」という松井さんらしい考え方ですね。さまざまな選手と接してきた松井さんが思う、強くなる選手はここが違う、という点はありますか?

松井例えば10時から練習があるときに、10時に来ちゃダメなんです。9時からアップをしておいたり、年上の選手がくる前に来ていたり…。部活でやるようなことが、実は大切。そうすることで、練習に対するモチベーションも変わるんです。わたしが率先してそれをやることで、まわりも気づいてくれたらと思っています。

さりげなくサポートし、黙って手本を示してくれるというのは、理想的な先輩です…!

松井わたしはスカッシュをはじめて、人間的に成長できました。これからも、まだ自分に足りないものを身につけられるように、スカッシュを続けたいと考えています。同時に、スカッシュの楽しさに共感してくれる人も、増やしていきたいんです。現在、オリンピック種目の候補にもなっていますし。

カロリー消費量が高く、ストレス解消になるので、初心者にも◎

スカッシュをする松井さん

スカッシュのファンを増やしたいという話が出ましたが、記事を読み、スカッシュに興味を持つ読者の方もいるはず。これからはじめてみたいという人に、改めて、スカッシュの魅力を教えてください。

松井スカッシュはイメージ力を使うスポーツ。自分がボールを打つときには、前の壁にボールを当てなければなりません。でも、前の壁に直接打たず、横の壁に当ててから前の壁に当たってもいいし、後ろの壁に当ててから前の壁に当ててもOK。床にバウンドしてから2バウンドしなければいいんです。どこにボールが跳ね返るかを考える必要があるので、ビリヤードの立体版のようなイメージなんです。

かなり頭を使いそうです。コートは広くありませんが、運動量も相当なのでは?

松井横や後ろの壁も使っていいので、ラリーが長くなりますし、テニスよりも球が速いので、消費カロリーも高いですね。試合は、1ゲーム11点、5ゲームマッチの3ゲーム先取で終了します。プロの長い試合では、1ゲーム1時間かかることもありますよ。

壁に向かって打つので1人でもはじめられるし、スパーン・スパーンと軽快な音が繰り返されるのも、気持ち良さそうです。

松井初心者の方は、「上手にできないけど、ストレス発散になる」とおっしゃいますね。室内競技なので、天候に左右されることもないですし、日焼けをしない点も、女性の趣味としてぴったりだと思います。

今日はありがとうございました。今後も松井さんの活躍に、期待しています。ちなみに東京オリンピックの追加種目が正式決定するのは、来年。今年の9月末には、スカッシュを含む現在の候補から、1ないし複数に絞り込まれるとのこと。そこでスカッシュが選ばれるのかどうかも、注目したいと思っています!

Information

スカッシュスタジアムSQ-CUBE

松井千夏さんほか、多くのプロ選手が所属する、スカッシュ施設。札幌市・さいたま市・横浜市にスカッシュコートを持つ。初心者のためのイベントや講座も、不定期で開催。今回の撮影は、横浜の施設にご協力いただきました。

『スカッシュ上達テクニック』(実業之日本社)

スカッシュの練習方法満載の、松井さんの著書。初心者がマスターすべき基本のショットから、経験者が上達するためのヒントまで、画像つきで解説している。

『スカッシュ上達テクニック』をもつ松井さん松井さんのサイン
松井さんに、かわいい笑顔マーク入りのサインをいただきました。
同書は、d-laboミッドタウンの図書コーナーで閲覧できます。
d-laboコミュニケーションスペース

d-laboコミュニケーションスペースでは、スポーツ、文化、食、芸術、最新トレンドなどのさまざまなテーマのセミナーを頻繁に開催しています。場所はミッドタウンタワー7F。平日の他、土曜祝日もオープンしています。

撮影・蟹由香