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2015 Jul.16
コレクターズRoom Vol.6「ヴィンテージデニム」

移り変わる世界で、普遍の価値を求めて。ヴィンテージの魅力とは

お気に入りのヴィンテージデニムを掲げる橋本さん

愛するモノに囲まれた暮らしは、豊かさと刺激に溢れているはず。「コレクターズルーム」では毎回、さまざまなコレクターを取材。コレクションする楽しさや自慢の逸品、収集に必要なお金のやりくり術などをご紹介します。

今回登場していただくのは、ヴィンテージデニムをコレクションする文化服装学院教授の橋本定俊さん。もともと作業着として生まれたデニムですが、実はデニムに「ヴィンテージ」という概念を作ったのは日本人だということはご存知でしょうか?そんなヴィンテージデニムの魅力、そしてデニムや洋服以外にも「ヴィンテージ」そのものがもたらす価値や魅力について、橋本さんにお話を伺いました。

無理して買ったコートがセールで半額に…。
「価値」への疑問の末にヴィンテージへ

ヴィンテージデニムをテーブルに広げる橋本さん

橋本さんがヴィンテージデニムをコレクションするようになったきっかけは、現在の職場である文化服装学院に学生として通っていた頃にさかのぼります。当時はヨージヤマモトやコムデギャルソンといったモードブランドの服を着ていたそう。

「当時、DCブランドの冬物の高額なコートを無理してクレジットカードの分割払いで購入したんです。8月の終わりから9月頃だったと思いますが、コートなので着るのは12月頃ですよね。そうして着始めた途端、1月にそのコートがセール価格になっていたんです。僕はそのコートはセールにならないと踏んでいたのですが、はじめてローンを組んだコートが半額近くになっていて非常にショックを覚えました。物の価値ってなんだろうと、本当に考えさせられた出来事です。そうした末に、価値の変化がない洋服は何かといったら、それはヴィンテージウェアだという結論になったんです」

“価値”への疑問の末にヴィンテージウェアの道に進んだ橋本さんですが、特別にデニムにこだわりがあるというわけではなく、コーディネートの結果として自然とデニムを購入するようになったといいます。

「最初はミリタリーウェアやハワイアンシャツを買っていました。そうしたトップスに合わせるボトムスといえばジーンズということで、自然とヴィンテージデニムもコレクションするようになりました。僕が最初にヴィンテージデニムを買ったのがバナナボートというお店なのですが、そこはヴィンテージデニムという新たな価値を日本から創りだした平野さんという方がはじめたお店なんです。そのお店でA2というミリタリーレザージャケットを買い、そのジャケットにあわせられるボトムということでリーバイスのジーンズを買ったのが始まりです」

そして橋本さんの「ヴィンテージ」への興味の範疇は洋服にとどまりません。

「僕は生活全部が“古い”んです。着ている服も古いし、家にある家具も古い。新しいものは極端に少ないですね。生活に関わるほぼ全部がコレクションです。万年筆もカメラも時計も古いものを使っていたのですが、メンテナンスも大変で気が抜けないですよ(笑)。これはもう学生の頃にヴィンテージにハマってから、洋服以外も全部ヴィンテージを選ぶようになって、それ以来ずっと続いているスタイルです。バイクもクルマも古いものを所有しているのですが『村上さんのいるところ』という村上春樹さんの期間限定サイト(現在は公開終了)に、『トヨタスポーツ800というクルマに乗って、実家のある福岡まで帰った』という旨を投稿したら、村上さんに『ビックリしました』というお返事を掲載してもらったくらいです」

■橋本’sヴィンテージデニムコレクションお気に入りベスト3■

Levi Strauss “501XX” オーバーオールズ 1937年頃

Levi Strauss “501XX” オーバーオールズ正面

当時オーバーオールズと呼ばれた初期のジーンズ。リーバイ・ストラウス社は現在まで続くジーンズの基本形を1900年代初頭までに完成させ、その後、時代にあわせて改良を加えていった。後ろウエストには現在では見られないシンチ・バック(調整用のベルト)がつく。この頃から後ろポケットに赤いタブがつくようになり、他社との差別化を図った。

Crown Overall Manufacturing "Jumper" 1917年

Crown Overall Manufacturing “Jumper” 1917年

クラウン社は1903年に設立され、1960年代まで存在した作業着の製造販売会社。本資料はアメリカ陸軍向けの作業用上衣で、襟元のタグには「ワーキング・ジャンパー」と表記されている。当時のクラウン社の作業着では、型番によってはステッチを白ではなく、本資料のように目立たない黒を選ぶこともできた。

USN HOODED PULLOVER DEIM JACKET フード付きプルオーバー 1940年代

USN HOODED PULLOVER DEIM JACKET フード付きプルオーバー マネキン着用USN HOODED PULLOVER DEIM JACKET フード付きプルオーバー マネキン着用 フード部分アップ

第二次大戦中に作られたアメリカ海軍のフード付きのプルオーバー。大砲部隊が甲板での作業用として使ったもので、フードはヘルメットの上からかぶる。洋上の潮風、大砲の熱や爆風から身を守るため、特にあごから胸にかけての開き部分は生地を三層に重ねる構造になっている。

貴重なヴィンテージデニムの数々。しかし「穿かないものはない」

濃い藍色のヴィンテージデニム

橋本さんのヴィンテージデニム、そしてヴィンテージへのこだわりとして挙げられるのが「実際に穿く、実際に使う」ということ。

「ヴィンテージデニムのコレクションは20本くらいですかね。数はそんなに多くはありませんが全部穿いていますよ。デニムに限らず、ヴィンテージだからといって使わないものはひとつも持っていません。僕にとってヴィンテージはコレクションの対象というよりは、興味の対象なんです。僕は服に携わる仕事をしていますが、ヴィンテージに触れることで知識が深まり、その知識が仕事とつながったりしてくるんです。アメリカ人からすると穿いて汚くなったら捨てるものだったジーンズに、平野さんという日本人が『ヴィンテージデニム』という価値を創りだしましたが、まずその『ヴィンテージ』という価値自体が不思議で、興味が喚起されます。僕はヴィンテージデニムとは、侘び寂びみたいなものじゃないかと思ったりもしています。布がかすれたり色が落ちていくことに喜びを感じるというのは、利休が考案した井戸茶碗のようでもありますからね」

お話を伺いながらずっと気になっていた質問を2つぶつけてみました。今狙っているヴィンテージデニムはありますか?そしてヴィンテージじゃない現行品のデニムは持っているのでしょうか?

「特に欲しいものは無いですね。もう一生分持っているので十分です(笑)。でも、欲しくはないんだけど、最高だと思うデニムはあって、それは1926年くらいのリーのジーンズです。

これは写真でしか見たことがなくて、どこにも出回っていないジーンズなんですよ。一度は本物を見てみたいと思っています。

現行品も、もちろん持っていますよ。…1本だけですけど(笑)。僕は基本的にジーンズしか穿かないのですが、古いものを穿いて行くとまずいような場では、リーバイスの現行品である濃紺のジーンズを穿いて行きますよ」

デニムに限らず生活のほとんどをヴィンテージ品とともに送っている橋本さんですが、そのためのコレクション費用はどのようにやりくりしているのでしょうか?

「月給とボーナスはほとんどそのために消えているという感じですね。コレクションのために特に節約というものはしておらず、自由に使えるお金は全部使っています。クレジットカードの分割払いはよく使いますね。出会ったときに買わないと二度と出会えないものもありますので」

そして橋本さんには収集したヴィンテージを使ってやりたいことがあるといいます。

「ヴィンテージライフA to Zとでも言うような、生活の中で食品以外をヴィンテージにするというライフスタイルを紹介したいです。ヴィンテージと呼ばれるものは、基本的にデザインとして優れたものが多く、決して古くならないのが魅力です。結局は今にないデザインが人を惹きつけるんですよ。昔のものでもデザインが良ければ今でも使えますし、実際に復刻されたものが販売されていたりしますよね。そして実際にヴィンテージに触れると、通常の生活では作れない心の引き出しができてくる。古いものを見ていると、心が豊かになるし知識も豊かになるんです。それは身の回りに置いて、実際に使ってみないと分からないことだと思います」

■コレクター's データ■
折り重なるヴィンテージデニム
  • コレクション:ヴィンテージデニム
  • コレクション歴:20年以上
  • コレクション数:約20点
  • 費やした費用:国産車1台分位