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2014 Aug.5
お気に入りの1冊 —My Favorite Book— Vol.11

世界で戦えるアーティストになるために
カンフル剤となった1冊
『芸術闘争論』村上隆著

読書は人生の糧であり、本はときに「夢」へと進む自分を導いてくれる「師」となってくれます。本シリーズは各方面で活躍されているみなさんにそうした自分にとって唯一無二の本、「お気に入りの1冊」をご紹介いただくコーナーです。
11回目にお招きしたのはアーティストの新井文月さん。書評サイト「HONZ」のレビュアーでもある新井さんが紹介してくれたのは村上隆氏の『芸術闘争論』。同じアーティストとしていかに作品を世界に発信していくか。芸術家に必要な「戦う要素」が詰めこまれた1冊は、「『HONZ』に入るきっかけにもなった」とのこと。「アーティストには読書が必須」という新井さん。アーティストとして、そして読書人としてお話を伺いました。

語り手
新井 文月(アーティスト)
聞き手
鈴木 大介(d-laboスタッフ)
世界で戦えるアーティストになるために カンフル剤となった1冊

「HONZ」に入るきっかけになった1冊

新井さんインタビューの様子

鈴木今日お持ちいただいた『芸術闘争論』は新井さんが「HONZ」に入るきっかけとなった1冊だそうですね。目次を見ると、現在のアートシーンやアートの見方、作品の創り方、アーティストになる方法など、かなり具体的なことが書かれています。若いアーティストやアーティスト志望の人には役に立ちそうな本ですね。

新井3年ほど前、「この先、自分がアーティストとして、どう活動していこうか」と思索していた時期に、たまたま「HONZ」がレビュアーを募集していることを知ったんです。ちょうど「HONZ」が立ち上がる頃で、芸術の分野に詳しい人はいないだろうと思い、この本の書評を書いて応募したら採用されました。実を言うと「HONZ」に応募するまでは、本は全く読んでいなかったんですよ。

鈴木それは意外ですね。本を読まなかった新井さんが書評をするほどの読書家になられた。そこには当然ながら理由や必然性といったものがあったんでしょうね。

新井今年、ニューヨークで個展を開きました。そのときに外国人のお客さまと商談をしたのですが、アート作品を買おうという人はやはりお金持ちだし知識人なんです。その方は外交官で、会話をすると経済から美術まで、どの分野にも造詣が深かった。やはりこうした方々と接するにはこちらも深い知識を持っていなければならない。それには読書がいちばん有効なのです。それと、アート界というのは特殊で、コンセプトを重視するんですよ。アーティストは、ただ綺麗な作品を制作していればそれでやっていけるかというとそうではない。たとえば、僕の『LOVE』という作品は「愛」という文字をアートとして表現していますが、外国人を相手にするときは「なぜ愛という文字をこういう形で表現したのか」、「なぜ書道なのか」、「なぜこの色なのか」を論理的に説明しなくては納得してもらえないんです。今回お持ちした村上隆さんのこの本は、こうした現実に対してまさに最適なやり方が書いてある。アーティストがどう理論武装してアートの世界で生きていくか。僕はそれをこの本から教わったし、読書の大切さも感じてたくさんの本を読むようになりました。

鈴木日本には「和」のテイストのような、日本人同士なら何も言わなくても通じ合えるものがあるけれど、外国人が相手だとそういったところも論理的に説明する必要があるのですね。

新井現代アートはニューヨークが最先端。村上さんの考えでは、その最先端にいる人々に向かって村上さん自身の作る作品について、「あなたたちのおかげで僕は今こういう絵を描いています」と説明しています。日本がアメリカと戦争をして負けたことで育ったのが「B級」と呼ばれたアニメやマンガなどポップカルチャーでした。だから僕もこうしたポップな分野を題材にして作品を創っているのです、と。こういうふうに筋道を立てて言うと、相手も“I see”となるんです。この本には構図やコンテクストなど、それをさらに複雑化して見せる方法がとても具体的に書いてあります。例を挙げるなら、「死のイメージ」を表現して伝えるには「ドクロ」を描くとかといったことですね。

<『芸術闘争論』より抜粋>

なぜ、ドクロを描かないといけないのか。コンテクストにおいて、ドクロの作品は、西洋のアートシーンでは「死の象徴」です。個性としてはアニメ風のドクロの図像を描く。西欧だとダミアン・ハーストでも誰でも結構おどろおどろしく描きますから、ぼくはドクロをコミカルに描きました。

新井さんインタビューの様子

美大では教わらないことを教えてくれた

新井さんインタビューの様子

鈴木お聞きしていると、プロのアーティストというのは芸術性以外にも人を説得する力など、いろいろな能力が要求されるようですね。

新井日本人はアーティストというと、「田舎で静かに暮らして職人的に作品を創っている人」、といったイメージを持っている人が多いけれど、実際にプロとして活躍しているアーティストは全然違います。自分でアクションを起こし、精力的に活動し、相手を説得しています。もちろん新しい表現も考えなければならない。論理的思考を備えると同時に、みんなを説得する画力もないといけない。そういう意味では万能でないといけない。ピカソやアンディ・ウォーホールといった天才と呼ばれるたちは、それをふまえて影響力になるわけです。ピカソはデッサンが上手くて驚くほど写実的な絵も描いていたけれど、その写実的な絵画が浸透している時代に、新しい価値観が必要だと気づき、「へんな構図だけど、わかる人だけわかってください」とキュビズムを生み出した。そして興味がありそうな人達を説得してマーケットを生み出し、ビジネスに変えていったんです。つまり「アーティストというのは自分から出て行って企画交渉しなきゃいけないんだよ」ということです。今ではシンプルに聞こえますが、本書の内容は美大では教えてもらえませんでした。

鈴木この本から学んだことが、実際に役に立ったというエピソードがあれば教えてください。

新井先程お話ししたニューヨークでの個展では、作品を論理的に説明することがいかに大切かあらためて感じました。父親が赤ん坊を抱いている『輪廻(FULL-CIRCLE)』という作品などは、隅々まで説明を求められました。そのときは「輪廻というイメージから、赤子を抱いている父親には亡くなった祖父の着物を素材にして実際に着せてみた」、「風が吹いているのは、人生には必ず逆境の風が吹くから。飛行機も風の抵抗があるからこそ飛び立つことができる」、「親が少し笑っているのは希望の光を見ているから」と、こんなふうにコンセプトをきちんと説明しました。そうしたら相手の方は「私はこの絵を買いたい」と言ってくれたんです。

鈴木聞いていると優秀なビジネスマンみたいですね。

新井ありがとうございます(笑)。おそらく悠長に絵を描いているだけじゃアーティストにはなれません。僕も昔はそうは思っていなかったのですが、実際のアートの世界はもっとエグイし、どの業界でも同じだと思いますが、レベルアップするには、やれることは何でもやらなきゃならない。その意味で『芸術闘争論』は僕にとってカンフル剤になってくれた本でした。

鈴木まさにアーティストとは何たるかを教えてくれた一冊ですね。そんな新井さんの作品を見たい!という人も多いと思いますので、9月に展示会とセミナーをd-laboで開催しましょう(笑)。本日はありがとうございました。

<今回紹介した本>

『芸術闘争論』(村上隆著/幻冬舎)

『芸術闘争論』(村上隆著/幻冬舎)

Information 1

新井 文月 氏

1977年、群馬県生まれ。芸術家。多摩美術大学情報デザイン学科卒業。ストリートダンサー、振付師としても活躍。書評サイト「HONZ」ではレビュアーを務める。芸術支援団体フラワープロジェクト代表。2014年、ニューヨークにて個展を開催。

Information 2

d-laboセミナー&展示会

d-laboセミナー&展示会

本文中でも触れたように、本年9月、『d-laboコミュニケーションスペース』に新井文月さんをお招きして作品展示会とセミナーを開催いたします。日程は以下の通り。

作品展示  9月20日(土)~9月23日(火)
セミナー  9月23日(火)19:00~21:00

セミナーのお申込みはこちらから。
http://www.d-laboweb.jp/event/140923.html

Information 3

d-laboコミュニケーションスペース

d-laboコミュニケーションスペースは、ミッドタウンと二子玉川にあるフリースペースです。
東京ミッドタウン/ミッドタウンタワー7Fにあるd-laboミッドタウンには「夢・お金・環境」をテーマにした本約1,500冊や書評サイト「HONZ」で紹介されたおすすめ本約700冊を所蔵。
二子玉川ライズ・オフィス12Fにあるd-labo二子玉川には、「趣味」をテーマにした本約700冊や「HONZ」のおすすめ本約500冊、そして約300冊の絵本を所蔵しています。
ミッドタウン、二子玉川ともに本好きにはたまらない空間となっています。文化、芸術、スポーツ、最新トレンド等のセミナーやイベントも頻繁に開催。

夢研究所「d-labo コミュニケーションスペース」ミッドタウン夢研究所「d-labo コミュニケーションスペース」二子玉川

詳しくはこちらから。
http://www.d-laboweb.jp/space/