d-labo

SURUGA d-labo. Bring your dream to reality. Draw my dream.

特集

特集TOP

2014 Jul.30
Be Unique! ~オンリーワンであること~ Vol.8

自転車ツーキニスト 疋田 智の
次なる夢

『Be Unique!』特集では、毎回、「オンリーワン」な人や企業を訪問。その価値と魅力に迫ります。なぜオンリーワンなのか、どうやってオンリーワンな存在になりえたのか…。そこにはきっと、ほかにはない「夢」や「ストーリー」があるはずです。

自宅から勤務先まで毎日自転車で通う“自転車ツーキニスト”として、活動している疋田さん。著書、ラジオや雑誌への出演、NPO法人の理事など、幅広いシーンで活躍しています。そんな疋田さんの本職は、テレビプロデューサー。多忙な本職がありつつも街乗り自転車界を牽引する、疋田さんの活動に迫りました。記事後半では、著書の執筆、自転車通勤の普及、自転車界を深く知ること…と、さまざまな夢を実現させてきた疋田さんの、次なる夢もインタビュー!合わせて、ビギナー向けのお役立ち情報もご紹介します。

自転車ツーキニスト 疋田 智の次なる夢

自分の中の大切なものを捨てたくなかった
それが、すべてのはじまり

疋田さんインタビューの様子

“自転車ツーキニスト”として活動する一方、会社員としての顔も持つ疋田さん。大学卒業とともにテレビ局に就職し、現在は、朝の情報番組と深夜のトーク番組でプロデューサーを務めているそうです。忙しい本業がありつつも、自転車関係の活動をはじめることになったきっかけから、教えてもらいました。

「小・中学生の頃は、自転車少年。大学生の頃もよく乗っていました。でも卒業してテレビ局に入ると、全然乗らなくなってしまった。新人はADからスタートするんですが、これが本当に忙しい仕事で、時間がなかったんです。再び乗り出したのは、20代後半のディレクターになった頃。当時住んでいたマンションの住民総会で、『駐輪場に並んでいる汚い自転車は、どうせ乗らないんだから捨てましょう』と決まって。駐輪場にあった自転車のなかで、一番汚いのは私のだった。ヤバい、このままでは捨てられる!とあわてて、磨き直したんです」

疋田さんは、著書の『自転車ツーキニスト』(光文社)で、このときのことを、サラリーマン生活を送るなかで、「真っ先に磨り減っていったのが、このような少年的な自転車的な何かだった」と記しています。「実際にこの自転車を捨ててしまったら、何か自分の中の大切なものを本当に捨て去ってしまう、そのような気が確かにしたのだ」とか。

キレイになった自転車があれば、自ずと乗りたくなるもの。しかし、若手ディレクターの疋田さんは、多忙な日々を送っていたそうです。担当していたのは、『筑紫哲也NEWS23』。夜遅い番組なので、番組終了後の反省会が済み、退社できるのは夜中2時頃だったと話してくれました。

「自転車に乗るなら通勤ぐらいしか時間がないな、と思ったんです。そのとき住んでいたのは、職場まで12キロほどの場所。電車の場合はドアtoドアで50分ほどだったので、最初は自転車で2時間くらいか…と予想したものの、実際は45分で行けた。これは使える!ということで、自転車通勤をはじめたんです」

自転車通勤で最初に感じたメリットは、「時間が有効に使えるようになったこと」といいます。

「夜中2時に帰るとき、電車がないので、会社の乗り合いタクシーを使うんですが、ほかのスタッフと乗り合わせるので、気を使う。でも特別話すことはないし、車内は暗いから本も読めない。閉じ込められて、じっと無駄な時間を過ごしている感じ。これが自転車に変わったのは、すごくよかった。時間も自転車の方がかからないし、1日がすごく有効に使えるようになりました」

疋田さんの著書のなかでも人気の高い、『自転車ツーキニスト』(光文社)と『ものぐさ自転車の悦楽』(マガジンハウス)。現在、25冊以上ものの著書がある。
疋田さんの著書のなかでも人気の高い、『自転車ツーキニスト』(光文社)と『ものぐさ自転車の悦楽』(マガジンハウス)。
現在、25冊以上ものの著書がある。

本職での出会いが、
デビュー作の出版へとつながった

疋田さんインタビューの様子

自転車通勤により、時間を有効に使えるようになったと語ってくれた疋田さん。また、車を手放したことで支出が減り、体重は15キロ以上減少したとか。街が身近になり、季節を感じるようになったのも、自転車ならではの良さといいます。

それらの体験を最初に本にまとめたのが、WAVE出版から1999年に発行された『自転車通勤で行こう』(現在は、大幅に加筆修正した文庫版『自転車ツーキニスト』(光文社)として発売されている)。それまで、文章をメディアに発表したことはなかった疋田さんが著述家となるまでには、どのような経緯があったのでしょうか。

「この本を出す直前、遺跡発掘の特番を製作するために、1年半ほどペルーにいました。でも、発掘ってなかなか進まないから、時間を持て余してしまって。発掘記のようなものを書き溜め、個人で小学館のノンフィクション大賞に応募したんです。最終選考まで残ったんですが、結局、グランプリは獲れなくて…。最終選考まで残った自信と、結果を出していない悔しさが、次の執筆へとつながりました」

また文章を書きたいと思っていた矢先、疋田さんは、テレビの仕事を通じて、出版プロデューサーと知り合ったそう。当時、最寄り駅まで自転車を使う人はいても、会社まで自転車通勤をしているサラリーマンはおらず、そのユニークさから、出版が決まったといいます。

「書きはじめたときもほとんど深夜の番組の担当だったから、午前中は出勤しなくてよかった。その時間を利用し、1年半かけて書き上げました。“ママチャリ”という呼び方が代表するように、その頃は、自転車に大人の男性が乗るって発想はなかったんですよ。自転車=子どもと女性のもの、というイメージがあって。でも、それじゃもったいない!ということを、この本で伝えたかったんです。

競技としての自転車に専門家はいるけど、街乗り自転車の専門家って、それまでいなかったでしょ?だから勝手に名乗っちゃった。それで、新たなジャンルとして認識された、という気がしています」

また1999年は、京都議定書が採択された年。エコへの関心が、自転車ブームの最初の追い風になったとか。続いて、メタボというワードが注目され、健康志向の自転車利用者がぐっと増加。2008年には、原油高の波が到来し、ガソリン価格が高騰。それまで都心と近畿圏のみだった“自転車ツーキニスト”が、地方でも増加したそうです。

「3つの追い風を受けることができたのも、運がよかった。本を出してから、“自転車ツーキニスト”が年々増えているな…というのは、交差点で信号待ちしているときなどにも、感じましたね」

疋田さんインタビューの様子

自転車は趣味ではなく、仕事。
だからこそ、深みにはまれる

疋田さんインタビューの様子

デビュー作で「文章を書く」という夢を叶えて以降も、およそ年2冊ペースで執筆している、疋田さん。会社員としての仕事が忙しいなかでも書き続けられているのは、オファーがあるから。そして「表紙の見本紙が最初に出たときや、最初に書店に並ぶとき、わーっとアドレナリンが出る。それが一種の中毒になっている」からだそう。

そんな疋田さんに、テレビと自転車、両方の仕事があるからこそのメリットを伺うと、「だって会社がなかったら、“ツーキニスト”じゃなくなっちゃうでしょ」と笑いながら答えてくれました。また、ふたつのこんな違いも、いい刺激になっているとか。

「テレビの仕事は、集団プレー。大勢が集まってつくるものだから、意見が合わなくてこちらの思いを引っ込めたり、取材がうまくいかなかったりと、思い通りにならないことも多い。でもチームでやっている分、終わったあとに、みんなで『カンパ〜イ!!』なんてシーンもある。本の場合は、そういう集団ならではの盛り上がりはないけど、自分の思う通りにできる。どちらも善し悪しがあって、その両方を体験できるのは、幸せですね」

さらに、「付き合うのが、テレビ業界の人だけに限定されないのは、自転車の仕事があるからこそ」と疋田さん。

「どんな業界も、業界内は人間のテイストが似通ってしまいがち。“○○屋らしい○○屋”って、ひとつのプロフェッショナルではあるんですが、視野が狭くなってしまう可能性もある。大学を出てからずっとテレビ業界にいても、多分私は、あまりテレビ屋らしいテレビ屋じゃないと思うんです。そうなったのは、自転車の仕事があったのが一因かなと思います」

これらのメリットを享受できたのは、趣味としてだけでなく、仕事として取り組んできたからだといいます。

「趣味って自分が楽しくてやることだから、苦しいことがあったら止めちゃうでしょ?でも仕事としてやっていると、こういうイヤなことがあったけど、こんないいこともあるなと、大きな視野で考えられる。趣味でやっていただけでは見えない世界が、ドーンと広がるんです。

自転車業界って経済規模としては小さいけれど、関わる法律、業界のあり方、顧客のありよう、スポーツとしての広がりなど、いろいろな学ぶべき側面があって、掘れば掘るほど奥深い。そうやって深みにハマっていくことができるのは、仕事ならでは。本業とは別に、掘り下げられる業界があるのは、単純に面白いですね」

移動手段はもちろん、ツーリングなどのアクティビティとして、タイムを競うスポーツとして…と、自転車にはさまざまな側面が。画像は、ツーリングを楽しむ疋田さん。
移動手段はもちろん、ツーリングなどのアクティビティとして、タイムを競うスポーツとして…と、
自転車にはさまざまな側面が。画像は、ツーリングを楽しむ疋田さん。

自転車環境の整備は、
自分がやらなければという意識がある

疋田さんインタビューの様子

現在、NPO法人自転車活用推進研究会理事(以下、自活研)、学習院大学生涯学習センター非常勤講師も務めている疋田さん。自活研では、自転車ユーザー向けのシンポジウムを開いたり、よりよい自転車環境をつくるため、行政への働きかけも行っているとか。また著書『自転車の安全鉄則』(朝日新聞出版)などでは、世界第一位の自転車事故大国である日本の問題点を提起しています。

単に自転車の普及から、だんだんと変化してきた、疋田さんの活動。現在の活動の背景には、どのような思いがあるのでしょうか。

「わたしの考え方や活動が変わったのは、2006年に起きた出来事がきっかけ。この年の末、自転車は歩道を走るようにという法案が、提出されようとしたんです。歩行者の脇を走るのでは自転車のよさが活かせないし、事故も増える一方だってことで、大掛かりな反対運動を行いました。結果、それは廃案になったんですが、その際に、法律や海外の事例をあれこれ勉強したんです。勉強するほどに、日本の自転車環境がよくないことがわかってきて。わかったからには、その知識を広めなければいけないし、日本で多い自転車事故も減らしたい。一種の責任感がありました」

デビュー本が発売されたとき、30代前半だった疋田さんは、現在47歳。年を重ねたこともまた、活動の方向をシフトするきっかけになったとか。

「例えば、今の若い子たちは、『かもめチャンス』や『弱虫ペダル』などの自転車マンガを読み、ある種の自転車ブームのなかにいる。それはそれで幸せなことですが、その一方、ろくに交通ルールも知らずに、自転車の世界に飛び込んでくる子もいないわけじゃありません。

それで事故が起きたときに悪いのは、明確なルールを用意して教えることも、自転車レーンなどのインフラを整備することもできなかった大人たち。じゃあ誰が大人の役目をやるのかといったら、本来は行政なんでしょうけど、そこを頼りにしていても、やってくれない。以前は、若い自転車乗りの一人という意識だったわたしも、今ではすっかりオヤジ。自分が旗ふり役になるしかないな…と思ったんです」

「若い自転車乗りからは、きっと、“ことあるごとにギャーギャー発言するハゲオヤジ”と認識されている」と笑う、疋田さん。インタビューのラスト、改めて、ここまで自転車に入れ込み続けている理由を伺ってみました。

「わたしに限らず自転車乗りは、シンプルさとか、ヒューマンフレンドリーなありようを、心のどこかで自転車から感じている気がする。だからこそ、自転車を愛するんだと思うんです」

そして、そのヒューマンフレンドリーなありようは、今の時代だからこそ、一層光ってみえるのだといいます。

「ひとことでいうと、自転車は“未来が見える”もの。20世紀は、便利で豊かなものを急拡大させてきた。21世紀は、それらを精査していく時代になるんじゃないかな。『これは確かに便利だけど、ここまでやるのは無駄じゃないか?』という風に、いかに“むだのない社会”をつくるかっていう方向に動くと思うんです。自転車は、そこで精査したときに残る、砂金。 この砂金、すなわち“自転車的なるもの”を活かすことこそ、未来のために必要なのではないかと感じているんです」

2008年に出版された著書、『自転車の安全鉄則』(朝日新聞出版)は、自転車歩道法案反対運動などを通して研究した海外の事例や、日本の問題点などをまとめた一冊。
2008年に出版された著書、『自転車の安全鉄則』(朝日新聞出版)は、
自転車歩道法案反対運動などを通して研究した海外の事例や、日本の問題点などをまとめた一冊。

〈疋田 智の自転車ビギナー向けLecture〉

疋田さんインタビューの様子

インタビューの途中、「以前、メディアで自転車を扱うときは、エコで、健康的で…と、いい面ばかりが取り上げられていた。でも今は、マナーや危険性などばかりがクローズアップされている」と話してくれた疋田さん。「自転車が楽しい・便利ということはすでに普及した。これからは、ネガティブな部分を正していくことが必要」と考えているそう。

疋田さんによれば、ロンドンでは、2012年のオリンピックの際に市長がロンドンの交通事情改革に乗り出し、自転車ユーザーが劇的に増加したとか。疋田さんの現在の目標も、「2020年の東京オリンピックまでに、都心の自転車事情を変えること」なのだそう。

今後は、ますます自転車ユーザーが増えることになるかも!?ということで、自転車に興味を持ったビギナー向けに、最低限用意すべき、安全対策アイテムを教えてもらいました。

ビギナー自転車乗りにオススメ!
3つの安全対策アイテム

■ヘルメット
自転車事故で亡くなる人の64%は、頭部の損傷が原因。ツール・ド・フランスでも、以前はヘルメットを被っていなかったそうですが、今は、出場者全員が被っています。

また、「ヘルメットを被っていると、ドライバーが『あいつは速いな』とか『あいつはわかっている自転車乗りだ』と理解してくれ、それなりに気をつかってくれるようになる」というメリットも。「事故が起きたときの頭部の保護、事故を未然に防ぐため。ふたつの意味で、ヘルメットは欠かせません」とか。

■フラッシャー
フラッシャーとは、赤くチカチカ点滅する小型ライトのこと。夜道で後ろからきた車にアピールできるよう、サドル後方などに取り付けるアイテムです。「夜中でなくても、ちょっと暗いかな?と思ったら、すぐにつける。2個くらいつけておくと、いいと思います」とのこと。

■バックミラー
「これは賛同を得られないことも多いんですが、右後ろを確認するためのバックミラーは、非常に役立つ」。自転車が走るのは車道の左端のため、右後方からくる自動車・二輪車などの動きを確認することは、非常に重要です。「バックミラーがあっても、最終的には後ろを振り返って確認するわけですが、振り返る前に大体こんな状況が迫っていると知ることができるのは、大切なことだと思います」とのこと。

自転車を、“未来が見えるもの”、“ヒューマンフレンドリーな乗り物”と呼ぶ疋田さん。そのメリットを活かすには、万人にとって安全であることが不可欠です。自身が見つけた“砂金”を輝かせるため、楽しさのアピール、安全面の整備・啓蒙…と、さまざまな角度からアプローチする。そして次々に夢を描き、実現に向けて動いていく。この姿勢こそが、疋田さんがオンリーワンであり続けている、大きな理由といえそうです。

ちなみに自転車に楽しく安全に乗るための知識は、疋田さんの著書にも詳しく書かれているので、この記事とあわせてお役立てください。

疋田さんインタビューの様子

Information1

疋田 智 氏

勤務先の東京・赤坂のテレビ局まで毎日自転車で通う“自転車ツーキニスト”。NPO法人自転車活用推進研究会理事、学習院大学生涯学習センター非常勤講師として、都市交通における自転車の活用を提言している。記事内に登場するもののほか、『自転車生活の愉しみ』(朝日新聞社)など、著書多数。最新作は、共著の『自転車“道交法”BOOK』(枻出版社)。

公式サイト
http://tourkinist.jp/classic/

Information2

疋田さんインタビューの様子

KUHNS(クーンズ)

撮影に協力してくれた、浅草橋のスポーツバー。今回の取材中画像は同店内で撮影したもので、登場する自転車もすべて、同店のもの(疋田さん乗車分以外)。店内には、マニアも納得の自転車パーツの数々が飾られている。自転車愛好家が集うのはもちろん、サッカー観戦などのイベントを開催することも。

公式メールマガジン
「週刊自転車ツーキニスト」
http://melma.com/backnumber_16703/

Information3

ロードバイク購入ローン

「本格的なロードバイクがほしい」、「カスタマイズにもこだわりたい」という方におススメしたいのがスルガ銀行のロードバイク購入ローンです。 対象はロードバイクからMTBまですべての自転車、そしてパーツやアクセサリーなど。返済は最高84回まで。ご自分に合った返済プランを組み立てることができます。

ロードバイク購入ローン

詳しくはこちらから。
http://www.d-laboweb.jp/d-bank/services/lifestyle_roadbike.html

写真 蟹由香