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2017年9月14日(木) 13:30~15:30

大谷 亜紀(おおたに あき) / 税理士

相続入門意外と知らない相続イロハ

 平成27年以降に相続を開始した場合の相続税は、基礎控除額が4割縮減され、最高税率も55%と増税になったのをご存知だろうか。以前の税制であれば、相続税を支払う必要があるのは一部の富裕層だけというイメージがあったが、今は誰もが納税する可能性がある身近な税金となっているそうだ。
 TOMAコンサルタンツグループ株式会社は、個人から企業まで、幅広く請け負うコンサルティング会社。今回は全6回に渡るタイアップセミナーの第1回で、TOMAコンサルタンツグループ株式会社所属の税理士・大谷亜紀氏を東京からお招きして、円満に財産承継をするために、今からスタートできる相続・争族対策についてご解説いただいた。

まずは遺産額を確認し、相続税を計算する

自分や家族に万が一のことがあったときに、大切な財産をどれだけ受け継がせることができるか、どれくらい相続税が生じるのかを確認しておく必要がある。まずは、正味の遺産額を計算し、相続税を算出する方法について教えていただいた。

【相続税の算出方法】
●1)正味の遺産額を計算する
 プラスの財産(現金・預貯金、土地・建物といった不動産、有価証券、生命保険など)から、マイナスの財産(借入金、葬儀費用など)を引いた金額が、正味の遺産額になる。
 土地の評価額がわからない場合は、国税庁のホームページから土地の1㎡辺りの価格(路線価)を調べ、これに面積をかけると、土地の評価を算出することができる。(厳密には補正率が加わる)。面積がわからない場合は、固定資産税の納税通知書から確認可能。ここの評価額は、市場価格のおよそ8割程度になるので、実際の売買価額はもう少し上になる。
自用の建物については、固定資産税の納税通知書に記載された固定資産税評価額を使う。(貸地、貸家建付地(アパートなど)は更に評価減あり。貸家について更に評価減あり)

●2)課税遺産総額を計算する
 正味の遺産額から基礎控除額を引いた金額が、課税遺産総額になる。
基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人(配偶者と子。子が死亡している場合は、孫。これらがいない場合は父母、祖父母。こちらもいなければ兄弟姉妹。兄弟姉妹がすでに死亡していればその子) の数。

●3)相続税の総額を計算する
 法定相続人が、妻と子ども2人、計3人の場合を例に検討してみる。
 課税遺産総額が2億円の場合、その総額を実際の相続割合ではなく、一旦法定相続割合で分け、その金額に相続税の税率(国税庁のホームページに税率の記載がある)をかける。現在の相続税の税率は、5,000万円以下が税率20%、控除額200万円、1億円以下が税率30%、控除額700万円だ。

妻1/2 1億円×税率30%—控除額700万円=2,300万円
子1/4 5,000円×税率20%—控除額200万円=800万円
子1/4 5,000円×税率20%—控除額200万円=800万円
累計金額である2,300万円+800万円+800万円=3,900万円が、相続税の総額だ。

●4)上記相続税の総額を実際の相続割合で負担する。
妻50%、子25%ずつ相続する場合
妻/3,900万円×50%=1,950万円
子/3,900万円×25%=975万円
子/3,900万円×25%=975万円
 しかし、妻には、配偶者税額軽減制度(正味の遺産額が1億6,000万円、もしくは配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い金額まで非課税になる)が適用可能なので、実際は、妻納税額0円、子それぞれに975万円ずつの相続税がかかることになる。

少しでも多くの財産を受け継いでもらうための節税対策

相続対策のポイントは、(1)相続財産を生前に減らす、(2)相続財産の評価を下げる、(3)相続財産の所有の組替え、納税資金を貯める、(4)相続人に争いを残さない、という4つの点だそうだ。今回は、時間の都合で(3)の説明は省いた。

【相続財産を生前に減らす方法】
●暦年(れきねん)贈与による基礎控除額の活用
 毎年110万円までであれば贈与税がかからないので、計画的に贈与を行なうことで、相続税の課税財産を減らすことができる。
 ただし、贈与税申告や契約書の作成をきちんと行なう必要がある。相続税の調査の際は、税務署は通帳などでお金の動きを確認するそうだ。贈与契約書などの証明がない場合、貸付金扱いになる可能性が生じる。贈与契約書は、インターネットで簡単に書式を手に入れることが可能。

●教育資金の贈与
 平成25年4月1日から平成31年3月31日までの間に、親・祖父母など(贈与者)が、30歳未満の子や孫など(受贈者)の教育資金に充てるためであれば、1,500万円までの贈与分を非課税にすることができる。金融機関などでの契約・手続きが必要など、要件あり。30歳までに使いきれない場合、残額について一度に贈与税がかかるため、贈与する金額にも注意が必要。

●結婚・子育て資金の贈与
 平成31年3月31日までの間に、親・祖父母など(贈与者)が、20歳以上50歳未満の子・孫など(受贈者)の結婚・子育て資金に充てるためであれば、1,000万円までの贈与分を非課税にすることができる。金融機関などでの契約・手続きが必要など、要件あり。
 贈与者が死亡した場合、その制度は終了となり、その時点で残額は受贈者が相続により取得したとみなされ、相続税の対象となる。通常、遺言書を利用すれば相続人以外にも現金等の遺贈が可能だが、相続税が2割増になる。しかし、「結婚・子育て資金の贈与」を活用すれば、受贈者が相続人以外でも2割加算されることはないが、実際活用する例は少ない。

●住宅取得等資金の贈与
 平成33年12月31日までの間に、親・祖父母など(贈与者)が子・孫など(受贈者)の居住用の家屋の新築、取得、または増改築などの対価に充てるための金銭(住宅取得等資金)を贈与した場合、一定要件を満たせば限度額までの贈与分を非課税にすることができる。

●不動産取得などにおける配偶者控除
 婚姻期間が20年以上の夫婦で、居住用不動産、もしくは居住用不動産を取得するための金銭贈与は、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)ができる特例。この制度は、相続による所有権移転と比べ、登記費用が高く、不動産取得税がかかるので、金額の面から言えば必ずしも得になるとは限らない。

●一代飛ばしの相続(贈与)
 相続税の税率が最高税率(55%)になる人の場合は、一代飛ばしで孫へ遺贈(=遺言による相続のこと)、または贈与することで、相続税がかかる回数を減らすことが可能。
 贈与税率、相続税率を比較して効果のある贈与、遺贈を行なう必要がある。

●相続時精算課税制度の活用
 2,500万円を限度に、生前贈与の控除を受けることができる制度。原則、60歳以上の父母、または祖父母から、20歳以上の子、または孫に対し、財産を贈与した場合に選択することができる。暦年贈与との違いは、一度に多額の財産を贈与できるかわり、相続時、相続税の課税対象となる点だ。下記のものであれば、相続時精算課税制度を活用するとよい。
・将来値上がりする可能性があるもの(将来、再開発で地価が上がる土地など)
・特例が活用できるもの(収用予定の土地、子どもの居住用の土地など)
・贈与時に評価を下げたもの(建物、賃貸物件、自社株など)
・収益を生むもの(収益物件、高利回りの有価証券など)

 ただし、一度選択すると暦年贈与に戻すことができないので、十分な検討が必要。これは活用の仕方が難しいため、専門家へ相談した方がよさそうだ。

【相続財産の評価を下げる方法】
●小規模宅地の特例
 小規模宅地の特例は、個人が相続、または遺贈により取得した財産のうち、相続開始の直前において、被相続人などの事業用、もしくは居住用に提供された宅地などのうち、限度面積までの部分(小規模宅地)については、相続税の課税価格が一定の割合で減額されるというもの。

「小規模宅地の特例」の要件を満たせば、宅地の評価額を80%まで減らすことが可能。また、貸地にしていたり、賃貸物件を経営していたりすると、50%まで減らすことができる。適用要件がそれほど厳しくないため、ぜひ活用したい。
「使い道がない現金があるなら、土地の上にアパートなどの上物(うわもの)を建てておくとよいかもしれません。」
 あまり大きな上物を建てたくないというのであれば、立地によってはコインパーキングなどの駐車場経営もお勧めだ。  

「相続」は「争族」にしないために

「相続」は「争族」になりやすい。節税も大事だが、相続人が相続財産をめぐって争いにならないようにすることが最重要である。そのための対策として、遺言書を書いておくことが大事だと大谷氏は話す。
「自宅と賃貸アパートのみが財産として残されていたら、ほとんどの相続人は収益物件となる賃貸アパートが欲しいと言います。ある例では、4人相続人がおり、分割を決めることができず、両方共有名義とせざるを得ませんでした。しかし、共有名義では修繕さえも困難。いずれ揉める結果となってしまいます。そうならないために、単独所有にできるように遺言書に書いておきましょう。」

【遺言書の種類】
●自筆証書遺言
 自筆で書き、日付と署名、押印をして封筒に入れて保管する。証人は不要。本人、相続人、遺言執行者などが保管する。検認(=家庭裁判所が遺言書の内容を確認すること)が必要。作成の費用がかからないのが魅力だが、紛失・偽造の可能性がある。

●公正証書遺言
 公証役場で作成してもらい、実印を押す。2人の証人が必要。公証役場で保管してもらう。検認は不要。財産の額に応じて、公証役場での手数料がかかる。

●秘密証書遺言
 自筆、代筆、ワープロなどで作成、署名押印をし、公証役場へ持参する。2人の証人が必要。本人、相続人、遺言執行者などが保管する。検認が必要。公証役場の手数料は、11,000円。紛失・偽造の可能性がある。

 遺言書の中で、最も確実な方法は、公正証書遺言だそうだ。自筆証書遺言や秘密証書遺言は、自筆、代筆、ワープロなどで作成するため、形式に不備があると誤解が生じやすい内容となる可能性がある。公正証書遺言であれば、公証人が作成するため、内容に確実性がある。家庭裁判所での検認手続きも不要なので、速やかな遺言執行が可能だ。
 なお、公正証書遺言の内容に不満があれば、相続人全員の同意があれば、遺言書とは異なる内容の遺産分割協議を行なうことも可能。その際、遺言執行者がいる場合は、遺言執行者の同意も必要となってくる。

 「現金と異なり、不動産を所持していたり、会社経営をしていたりすると自社株や事業用資産を所有しており、遺産を分割しにくくなるため、最低でもこれらについては遺言を残しておきましょう。」とアドバイスしてくれた。
 遺産をめぐり、仲が良かった兄弟が骨肉の争いになるというのはよく聞く話だ。お金の問題で一度壊れた仲は、簡単には修復しにくい。「少しでも多くのお金を、家族や孫たちに」と思うのは大切だが、残される家族たちが「争族」とならないよう、遺言書をしっかりと残すことの方が非常に重要だ。
文・河田 良子

講師紹介

大谷 亜紀(おおたに あき)
大谷 亜紀(おおたに あき)
税理士
TOMAコンサルタンツグループ株式会社TOMA税理士法人資産税部副部長
数多くの相続税申告、相続対策コンサルティングに関与している。国際相続コンサルティングも手掛けており、アメリカからの相談も多数寄せられている。得する相続対策だけでなく、親族間での相続トラブルの回避など、対策をされる方と、相続される方の立場に立った親身な対応に定評がある。