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2017年1月26日(木)19:00~21:00

近藤 慎太郎(こんどう しんたろう) / 医療法人穆心会クリントエグゼクリニック医師

『40歳の胃がん、35歳の大腸がん』

胃がんは40歳代、大腸がんは30歳代と比較的若い世代から増加すると言われています。万が一、若くして進行した状態のがんが見つかった場合、子供が小さかったり、保険などの備えが十分でなかったりして、本人はもとより、その家族も非常に困難な状況に陥ることもあります。ただ幸いなことに、胃がんや大腸がんのほとんどは、大事なポイントを押さえれば"治る"のです。そして、この2つは、全てのがんのうちの1/3を占めているので、対策をきちんとすることによって、若くしてがんで命を落とす可能性を格段に低くすることができるのです。本セミナーでは、がんにまつわる様々な誤解を解き明かしながら、"治る"がんである胃がん、大腸がんについて分かりやすく解説いただいた。

がんは「治る病気」

日本人の死因といえば、1950年代までは結核が第一位。しかしこれは抗生物質が発見されたことで激減した。そのあとに増えたのは脳卒中や脳梗塞、くも膜下出血などの脳血管疾患。 が、これも「血圧」というポイントを抑えることで予防が進んだ。

「かわりに第一位となったのが、がんです。いまや日本人の3人に1人はがんで亡くなる時代。2人に1人は生涯のうちに何らかのがんにかかると言われています」

講師の近藤慎太郎氏は人間ドックや健康診断を専門としている予防医学の現役医。この日のセミナーでは、がんの中でも全体の3分の1を占めるという「胃がん」と「大腸がん」についてお話しいただいた。 最初に知っておきたいのは「がんは治る病気」だということ。がんには確かに膵臓がんのように難治性のものもあるが、大腸がんや胃がん、それに肺がんの一部、前立腺がん、甲状腺がん、 女性に多い子宮頸がんや乳がんなどは発見が早ければ「治る」のだという。

「がんというのは一括りにはせずに個別に戦略を立てていくこと。それが大事です」

一般的にがんは加齢とともに発生率が高くなる。では若ければがんにならないかというとそんなことはない。男性の場合、胃がん患者の10パーセント弱、大腸がん患者の15パーセントは50歳以下。 女性だとこれがそれぞれ15パーセント、20パーセント。がんになる可能性は若くてもあるということだ。がんを予防するには「まずリスク因子を避けること」。がんのリスクは大別すると 「生活習慣」と「感染症」の2つ。喫煙や過度の飲酒、肥満、野菜不足、塩分過剰、それにB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、パピローマウイルス、ヘリコバクターピロリ菌などが代表的なリスク因子だ。 煙草というと肺がんを想像しがちだが、

実際は「肺がんだけでなくほぼすべてのがんのリスクを上げます」。「禁煙」はがん予防の第一歩と考えたい。

がん予防に禁煙は不可欠。胃がんはピロリ菌、大腸がんは肥満に注意


がんのリスク因子で最大のものはピロリ菌。この細菌に感染すると萎縮性胃炎にかかりやすくなる。胃炎となって死んだ細胞は生まれ変わりを繰り返し、そのうちにたまった遺伝子のコピーミスが発がんへとつながる。

「ピロリ菌がある人とない人とでは発がん率が違う。ピロリ菌がある人は除菌することでがんになる確率を下げることができます」

次に二次予防となるのが「がん検診」だ。一般に市区町村の検診で行なわれているのはバリウム検診だが、近藤氏が推奨するのは胃カメラ(内視鏡)による検診だ。というのも、バリウム検査による胃がんの発見率が 0.08パーセントなのに対し、胃カメラによる発見率は約3倍の0.28パーセント。精度が高いうえ、「同時に食道がんの検査も受けることができる」というメリットがある。

「胃カメラは辛そうだという人もいますが、実は肉体的にはバリウム検査も大変です。費用は1回につき3割負担で4000円ほど、保険外だと1万円ほどかかりますが、同じ受けるならば 胃カメラの方がおすすめです」

内視鏡はがんを発見するだけではなく、最近では手術にも使われている。早期発見であれば内視鏡手術によってがんを取り除くことも可能。

この場合は「胃はすべて残るうえ、合併症もほとんどありません」。

一方の大腸がんにおける最大のリスクはやはり「煙草」だ。アルコールは日本酒ならば1日1合、ビールなら大瓶1本、ワインならボトル半分くらいまでならそれほどのリスクにはならない。気を付けたいのは「肥満」。大腸がんは、腸内にできたポリープ(良性腫瘍)が異常をきたしてがんに変化するといったケースが多い。肥満の人はこのポリープができやすい。逆に言えば「減量」によってリスクを下げることができる。

「大腸にがんやポリープがあるかどうかを調べるには大腸カメラの内視鏡検査を受けることがいちばん。皆さんも40歳を過ぎたら、一度大腸カメラによる検査を受けてください」。

市区町村で行なっている大腸がん検診は便を採取する「便潜血検査」のみ。簡単で気軽に受けることのできる検査ではあるが「不正確という短所があります」。便潜血検査とは、便の中に血液が混ざっているかどうかを調べるもの。 「もし大腸内にがんがあればそこを便が通るときにこすれて出血するだろう」という考えから行なわれているものだ。ただし、1回の検査でがんを指摘できる可能性は30~56パーセント程度と高くはない。 そこで各市区町村とも2回3回と繰り返すことで精度を上げてはいるが、それとて十分とは言えない。

これが大腸カメラならば一目瞭然、もしポリープが見つかったらその場で切除することもできる。費用は2万5000円から3万円。けっして安くはないものの、一度は受けて自分がポリープができやすい体質なのかどうかを知っておくといいだろう。

リスク因子を下げ、検診は積極的に受けること

内視鏡に比べると不正確なバリウム検査や便潜血検査。だからといって受けないことはない。市区町村の検診は税金で賄われているもの。それを受けないのは「二重の意味で損」だ。もちろん、検診を受けているからといって安心しきってはいけない。国が行なう検診の対象は「日本人全体」。重要視されているのは「日本人全体を足したデータ」であり、必ずしも「国が国民一人ひとりの健康を守ってくれているわけではない」。自分の健康を本当に守りたいならできれば人間ドックを受けること。胃がんや大腸がん検査だけでも内視鏡検査にしてみるといった方法もある。

毎年1兆円ずつ増えているという日本の医療費。この先、患者の自己負担額はますます上がっていくと予想されている。それを最小限の出費に留めるには、なによりも病気にならないこと、そしてがんになってもできるだけ早期に発見し治療期間を短くすることが大切だ。そのためにも日頃からリスク因子を下げる努力をしていきたい。

「まずは大腸がんや胃がんなど患者数の多いがんのリスク因子を下げましょう。自分の健康は自分で守る。予防や検診は健康な生活を送るために必要不可欠。そのための基本的な支出なのだという発想の転換をしてください」

最近は講演の機会も多いという近藤氏。「夢」は「今を楽しみながら、頑張っているうちに、あれ、こんなところに来ちゃったな、と思えるような人生を送ること」だという。 「そのためにも健康でいたいですね」

講師紹介

近藤 慎太郎(こんどう しんたろう)
近藤 慎太郎(こんどう しんたろう)
医療法人穆心会クリントエグゼクリニック医師
東京大学医学部大学院卒業。日赤医療センター、東京大学病院、山王メディカルセンター内視鏡室長を経て、現職。専門は消化器内科、消化管内視鏡、予防医学。講演とブログを通じて医療、特にがん検診についての 解説、普及する活動を行なっている。日本内科学会認定医、日本消化器内視鏡学会指導医、日本消化器病学会専門医、日本肝臓学会専門医、日本人間ドック学会専門医、日本医師会認定産業医、医学博士。
ブログ『医療のX丁目Y番地』 http://blog.medicalxandy.com/