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イベントレポート

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2016年12月12日(月) 19:00~21:00

鳥光 宏、榎本 恵、Nadja /  

鳥光宏の熱血塾 -世界をつなごう!アフリカ編-
マコンデ族ナジャの音楽演奏とアフリカントーク

「私はおよそ10年間、東南アジアを旅しながら貧困の村・孤児院・学校などを訪ねて来ましたが、『自分一人の力では何も形にできない。どうしたらいいのだろうか』と思いあぐねていました。そんな折、偶然にもアフリカ・モザンビークの貧困地域で寺子屋を作り、さまざまな活動をしているという榎本氏の存在をTV番組で知ったのでした。そして、私はその行動力の凄さにとても驚かされたのでした」
今回は、「NGOモザンビークのいのちをつなぐ会」代表の榎本氏と、モザンビークの寺子屋を現地スタッフとして見守り、発展させている音楽家・ナジャ氏をゲストに迎え、モザンビークの現状や活動などをお話しいただきながら、ナジャ氏による音楽演奏をお届けした。

モザンビークに蔓延する貧困、理由は「行き着くところ教育」

予備校の人気講師として活動する一方で「いつかは現地に学校をつくって国のリーダーとなるような人を輩出したい」と東南アジア各地をまわっている鳥光宏氏。2回目の登壇となる今回のセミナーでは、アフリカのモザンビークで子供たちのための寺小屋を開いたり、農村地区でのトイレや井戸の新設、また、有機農業、ゴミ処理の啓蒙運動などに取組んでいる榎本恵氏と、ミュージシャンのナジャ(Nadja)氏をゲストに招待し、お二人に現地での活動やモザンビークの人々の生活ぶりについて報告していただいた。トークの合間にはナジャ氏の演奏も加わり、楽しいイベントとなった。

モザンビークがあるのはアフリカ大陸の南東部。人口は約2,400万人で、首都は南部にあるマプート。榎本氏やナジャ氏が住んでいるペンバはそのマプートから北へ飛行機で2時間半ほど。タンザニアとの国境にも近い海沿いの町だ。ベンチャー事業や新規事業開拓といった分野のプランナーとして活躍していた榎本氏が、日系バイオマス企業のアフリカ進出を支援するために現地に入ったのは2012年のことであった。すでにミュージシャンとして知られていたナジャ氏ともその年に出会ったという。

バイオ燃料という未来の新しいエネルギーを事業化するためにモザンビークを訪れた榎本氏。しかし、その目に映ったのは「いっさい変わらない現地の人たちの生活」だった。アフリカの多くの国がそうであるようにモザンビークでも貧困や飢餓は大きな問題となっている。
「見ていて、自分たちのやっていることと現地の実情とに違和感が広がっていったんです。こりゃ、あかんやろ」と思い、榎本氏は行動に移ったという。

貧困の根源は「行き着くところ教育」。モザンビークは独立前の宗主国であったポルトガルが現地の人々の教育に熱心ではなかったため、同じアフリカでもフランス領やイギリス領だった国々に比べて識字率が低い。算数も然り。企業が現地で人材を採用するために小学5、6年程度の算数のテストをしても解くことができる人は少ないという。
「私たち日本人は買物をするときにこれとこれでいくらになるかと無意識に暗算をしますよね。モザンビークの店でこれをやると、まわりの人たちが拍手をしてくれるんです」

こうした状況だから「家にお金があると全部使ってしまう」。これがモザンビークの大きな問題だという。

「西洋への憧れ」と「伝統文化」が混在

現地の子供たちに教育を。榎本氏が立ち上げたのはNGO『モザンビークのいのちをつなぐ会』。思いを聞いたナジャ氏もすぐに「手伝いたい」と協力を申し出てくれた。

ナジャ氏が属するのは古くからこの地に住むマコンデ族。黒檀を用いた仮面などの彫刻で知られているこの部族では「勇敢さ」が最も尊ばれる。そのアイデンティティーとなるのが顔に施す入墨だ。しかし、そうした伝統的な文化を継承しているのは、高齢の世代だけになってしまっていて、最近の若い世代は、入墨は入れていない。かわりに憧れているのは西洋の文化。実際、女性の中には白人に憧れて肌を白くする薬を使う人までいるという。その一方で、現地には古くからの文化もまだまだ多く残っている。そのひとつが呪術だ。モザンビークには善い呪術師である「クランデーロ」と、人を呪ったり殺めたりする「フェティセイロ」がいる。人々は頼みごとがあるときは彼らのもとを訪ねたり、あるいは家に招いたりして呪術をかけてもらう。榎本氏たちが現地で寺小屋を設立したときも「クランデーロを呼んで悪いものが入らないように結界を張ってもらった」という。

ここで、マコンデ族の母親たちが歌う子守唄をナジャ氏が演奏してくれた。モザンビークの公用語はポルトガル語だが、こうした歌はマコンデ族の言葉で歌われている。幼い頃から父親がいなかったというナジャ氏を育ててくれたのは叔父のナングンド(Nangundo)氏。モザンビークでは有名な歌手であったこの叔父のもとで、ナジャ氏も音楽的才能を伸ばしたという。一昨年には日本でも初公演。d-laboではこの子守唄のほかに、新曲2曲を含む3曲のオリジナルソングを披露してくれた。そこで歌われているのは「ロマンチックなものではなく、すべて自分の身のまわりで起きている事実」だという。披露された新曲のうちのひとつ『後悔』は、一度は夫を捨ててほかの男のもとに走った女が、結局は相手と破局し、元の夫のもとに戻ったのだが、復縁を断られるといったストーリー展開となっている。また、『孤児』の歌は、父も母もいない子供が「両親の顔を教えてほしい」と訴える曲。ナジャ氏の素晴らしい歌声もあって、聴いていると胸が熱くなってくる。

モザンビークよりも子供が自殺する日本の方が問題

現地では20人の大家族が暮らすナジャ氏の家に「居候をしている」という榎本氏。現地の人々はどんなものを食べているのか。スライドで紹介されたのは、串刺しになった野ネズミの素揚げやアフリカマイマイなど、日本人の目から見るとかなりワイルドな食材。興味深い食文化だが、残念ながら衛生環境が整っていないため食物が原因で感染症にかかる人が少なくない。実際、榎本氏が住んでいる地域では「5.5人に1人の割合で子供が死んでいる」という。食物以外でも問題となっているのがゴミや生水。モザンビークではゴミ処理施設が不足しているため、人々は家の外にゴミを捨てている。また農村部では土に穴を開けて湧き出した泥水や川の水をそのまま生活用水に用いている。これを少しでも改善しようとしているのが榎本氏たちのNGOだ。

先進国に比べると厳しいアフリカの人々の暮らし。だが、寺子屋に通う子供たちからは笑顔が絶えない。昨年、2年ぶりに日本に帰国した榎本氏は、経済的に貧しいモザンビークよりもいじめで子供が自殺するような日本の方が「はるかに問題点が多い」と感じたという。そう語る榎本氏の「夢」は、「日本の技術をアフリカに。アフリカのいいところを日本に。そうしたものを巡らせるシステムをつくることと、アフリカで働きたいという若い人の応援をすること」だ。ナジャ氏の「夢」は、「音楽に限らず生きるうえですべてのことに挑戦していくこと」。そして鳥光氏は、「今は榎本さんやナジャさんのような素晴らしい人たちとみなさんとのパイプ役になって、最終的には学校をつくるという自分の目標につなげていけたらいいなと思っています」と夢を語ってくれた。

イベントの最後はナジャ氏の『nkala(ンカラ)』。ダンス様式を歌ったテンポのいい曲に会場からは満場の拍手が贈られた。

講師紹介

鳥光 宏、榎本 恵、Nadja
鳥光 宏、榎本 恵、Nadja
 
鳥光 宏(とりみつ ひろし)
駿台予備学校 古文科講師
1959年、東京都生まれ。琉球大学医学部卒業。心療内科に深く共感し、「医学と学校教育の架け橋になろう」と思い、法政大学文学部で国語教職免許を取得し卒業。現在、駿台予備校の人気講師として教壇に立つ。また、衛星放送講座の講義でも日本全国に熱烈なファンが多い。著書に『鳥光宏の楽々古典文法』(文英堂)、『入試にでる古文単語が面白いほど記憶できる本』(上下巻・中経出版)、『「古文」で身につく、ほんものの日本語』(PHP新書)、『見て覚える 読んで解ける 古文単語330』(文英堂)がある。
オフィシャルサイト http://torimitsuhiroshi.com/

榎本 恵(えのもと めぐみ)
モザンビークのいのちをつなぐ会 代表
1973年、福岡県北九州市生まれ。大学卒業後、広告代理店勤務を経て、ベンチャー事業支援・新規事業開拓プランナーとして独立。主にバイオマス、環境分野の事業を手がける。2012年日系バイオマス企業のアフリカ進出に伴い、モザンビーク共和国入り。半年間、現地での新規事業開発を行ない、2013年4月にNGOモザンビークのいのちをつなぐ会を設立。

Nadja(ナジャ)
1987年、モザンビーク共和国・カーボデルガド州・ムエダ生まれ。ペンハ在住。マコンデ族。モザンビークを代表するミュージシャンである、故・Nangundoを叔父に持ち、幼少期よりアフロルンバをはじめとしたアフロミュージックを学び、民族の誇りや社会問題を作詞作曲し、歌いあげる。伝統的なマピコ(マコンデ族のダンス様式で精霊の面をかぶり舞踏する)の踊り手でもある。