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イベントレポート

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2016年 11月23日(水)①13:30~14:10 ②17:00~17:40

土田 卓(つちだ たく) / コントラバス奏者

コントラバス演奏会 ~dコンサート~

コントラバス。それは、あたたかで、芳香な響きを放ち、聴く人の体内で心地よくこだまする弦楽器。2メートル近くの背丈があり、一般の成人男性の身長よりも高い。ヴァイオリンや、木管楽器などに比べて、管弦楽で主役になる機会は少なく、そのどっしりとした風貌同様、音楽全体を支え、受け止めてくれる存在である。
今回は、島田市出身で、富士宮市在住の土田卓氏をお招きし、「dコンサート」を開催。コントラバスの音色をたっぷりと堪能するとともに、楽器の裏話をうかがった。

コントラバスは、縁の下の力持ち

コントラバスは、古くは300年前のものから、現代のものまで数々の名器がある。職人が魂を込めて製作した楽器は、何代もの演奏家によって愛され、修復を繰り返し、大切に現代まで受け継がれている。土田氏が使用する楽器も、およそ150年前のドイツ製のものだ。
「ヴァイオリンは、何億、何十億と、天文学的な値段がつくこともあります。コントラバスの場合は、世界的な名器でも1,000~2,000万円くらいです。」

コントラバスの弦は、他の弦楽器同様4弦。(注:5弦のコントラバスもある。)
ヴァイオリンは、完全五度の幅で弦が並んでいる。(低い方からG線[ソ]・D線[レ]・ A線[ラ]・E線[ミ]と、5音ずつ上に上がる。)対して、コントラバスは、完全四度の幅で構成される。(低い方からE線[ミ]・A線[ラ]・D線[レ]・G線[ソ]と、4音ずつ上に上がる。)
同じような低音の大型弦楽器であるチェロはヴァイオリン属であるが、コントラバスは、古楽器であるヴィオール属のヴィオローネ(ヴィオール属における大型低音楽器)が直接の祖先にあたる。ボディラインは、ヴィオール属の名残があるため、他の弦楽器と少し形が異なり、なで肩のようになっている。

弦楽器の音が出る仕組みは、主に、金属で作られた弦を、馬の尾の毛が張られた弓で弾くと、弦の振動を駒(=こま。弦の高さを保ち、弦の振動を駒が受け止め、本体へ伝える役割を果たす)が受け止め、それが表板を鳴らす。そして、魂柱(=こんちゅう。本体の中に入っている棒。楽器の表板と裏板の音をつなげる役割をもつ)を通じて音が振動し、楽器全体で音を鳴らし広がっていく。
弦楽器は、いろいろな要素が絡まりあって音が鳴る。駒の位置や高さ、魂柱の位置次第で、音量・音色が変わるとも言われる。いずれも、ただの木片のような印象だが、実は重要な役割を果たしているのだ。

「ワーグナーの『ニーベルングの指輪』や、ショパンの『ピアノ協奏曲』などは、20小節、50小節休んで、ピッツィカート(後述)1つ、そしてまた休符ということもあります。でも、それは、決して楽なわけではないんです。休符の間も、音楽の流れを感じ続けなければならないですし、ただ同じリズムを刻み続けているときも、そのスピードを保たなければなりません。」
コントラバスは、縁の下の力持ち。音楽の土台の音を作り、曲のビートを保つ存在でもある。超絶技巧があるなど、主役級の存在のヴァイオリンと比べたら、「コントラバスは楽そう。」と思うかもしれないが、オーケストラの中においては、要(=かなめ)の存在でもあるのだ。

オーケストラ通になれる!コントラバスの奏法と弓

オーケストラの中において、コントラバスは、舞台の上手(=かみて。向かって右側)に位置することが多い。指揮者の趣向によって、下手(=しもて。向かって左側)や、左右に分かれて配されることも。コントラバスの位置を確認することで、指揮者の曲への意図を考えながら聴くのもまたオツだ。
土田氏が「これを知っていれば、オーケストラ通になれる。」という、コントラバスの奏法(多くは弦楽器で共通)を教えてくださった。オーケストラの演奏会を訪れたとき、同伴者にこんなうんちくを語ることができたら、尊敬の眼差しを向けられるかもしれない。

[コントラバスの奏法]
●ピッツィカート(pizzicato)…弦を指で弾き、音を出す奏法。
●スル・ポンティチェロ(sul ponticello)…駒寄りで弾く奏法。金属音のような音がする。
●スル・タスト(sul tasto)…指板(しばん。指板の上に弦が貼られ、指で抑えることで、音程を変え
ることができる)の上で弾く奏法。やわらかい音色(おんしょく)が出せ
て、音量を抑えることができる。
●コル・レーニョ(col legno)…通常、弓の毛で音を鳴らすが、反対側の棒の部分で弾く、もしくは叩いて音を鳴らす。コトコト(弾く場合はキシキシ)といったような音が出る。「弓が傷む」と弦楽器奏者の多くが嫌う奏法。最近は、カーボン製の弓があるので、そちらを使う奏者もいる。
●ミュート(弱音器)をつけて弾く…駒と弦が交わる部分にはめ、弦への振動を少なくすることで、音を小さくできる。音色(おんしょく)も変わるため、演奏の雰囲気を変えることができる。ゴム製のものが一般的だが、土田氏は木製のものを特注し、使用している。
●駒をこする…キィーッとした、少し耳を塞ぎたくなるような音が出る。
●楽器を叩く…音の出し方。叩く場所によって音が異なる。

[コントラバスの弓]
日本人のコントラバス奏者の9割は、ドイツ式と呼ばれる弓を使用。残り1割は、フランス式の弓。土田氏は、フランス式の弓をドイツ式の奏法で使用しているという。オーケストラの中でも、一人いるかいないかの割合で、弓の持ち方が異なる奏者がいるので、一人ひとりの持ち方を観察してみるのも、おもしろいかもしれない。
●ドイツ式の弓…太くてやわらかい音が出る。下から支えるように持つ。
●フランス式の弓…クリアで引き締まった音が出る。ドイツ式のものより長さが少し短い。ヴァイオリンの弓の持ち方と同様に、上から持つ。

音楽のB級グルメ?!コントラバスの味わいを楽しむ曲

全身を包み込んでくれるような低音から、フラジオレット(=弦に軽く触れる程度で弾くと、その音の倍音といわれる、他の高さの音が鳴る。)の抜けるような高い音まで、幅広い音域の中でさまざまな音色を奏でてくれるコントラバス。今回の「dコンサート」では、「音楽のB級グルメ」と題し、あまり知られていないけれども、味わい深い曲を披露していただいた。

[今回の演奏会の曲目]
●テレマン 作曲「ヴィオラ・ダ・ガンバのためのソナタ」よりアンダンテ
●ドメニコ・ドラゴネッティ 作曲「12の無伴奏ワルツ」から12番
●ジョヴァンニ・ボッテジーニ 作曲「夢」
●クヌート・ギュトラー 作曲「グリーンスリーブスによる変奏曲」
●シュテファン・パラドフスキ 作曲「3つのカプリチオ」より第一番
●土田卓 作曲「ティラノサウルスの涙」

「作曲家も、売れる曲を書きたい。作曲家は、ヴァイオリン曲や、オペラ曲などお客さまを集められる曲を作ります。だから、コントラバスの曲は本当に少ないんです。そこで、コントラバス奏者自身が、自分たちのために曲を作ります。」
ドメニコ・ドラゴネッティは、「彼がオーケストラに入ると、10人分の働きをした。」という伝説を持つコントラバス奏者。ベートーヴェンとも親交があったとされ、本人の目の前でベートーヴェンが作ったバイオリンソナタを、コントラバスで弾いて見せたという。その演奏を聴いたベートーヴェンは、コントラバスの可能性を知り、あの有名な交響曲第5番「運命」の第3楽章や交響曲第9番「合唱付き」の第4楽章に、コントラバスが活躍するフレーズを書いたと伝えられている。
なお、アンコールで披露していただいた「ティラノサウルスの涙」は、土田氏が、絵本作家とのコラボレーションで作った曲なのだという。

「オーケストラや、ソロの演奏活動を通して、お客さまの笑顔と拍手をいただけるのが一番うれしい瞬間です。堅苦しいイメージのクラシック音楽を、もっと身近に感じてもらえて、音楽がコミュニケーションのきっかけになってくれたらと思っています。それが、私の夢でもあります。今後の演奏活動の中で、またどこかでみなさまにお会いできる機会があれば幸いです。」
参加者たちは、演奏する土田氏を真剣な眼差しで見つめたり、目を閉じ、音楽の世界に入り込んだりするなど、思い思いに聴き入っていた。コントラバスの太くやさしい低音に抱かれ、その魅力を初めて知った人も多かっただろう。土田氏の願いどおり、クラシック音楽を身近に感じられた機会になったようだ。

(今回セミナーは二部制でございましたが、本レポートは第一部の内容をまとめたものです。)

講師紹介

土田 卓(つちだ たく)
土田 卓(つちだ たく)
コントラバス奏者
島田市出身。桐朋学園大学カレッジディプロマコース修了。現在県内を中心にオーケストラやソロなどで活動中。ヨガ、絵本、朗読、日本酒、などとのコラボレーションを行なう。シンフォニエッタ静岡団員、劇団東京イボンヌ音楽監督補。静岡県オーケストラスクール講師。