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イベントレポート

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2015年10月15日(木)19:00~21:00

柴藤 亮介(しばとう りょうすけ) / (株)エデュケーショナル・デザイン

『おもしろい研究者が集まるプラットフォームを作りたい!

世の中にはたくさんの研究テーマがあり、その数だけ知的探求を続けている研究者がいる。しかし大学の外に出てしまうと、研究者が何を目的に研究をしていて成果は何なのかがわかりにくい。そのため、新しいプロジェクトの研究費を集めにくいという問題が出てきている。今回は、その状況を打破するために柴藤氏が立ち上げた研究者のためのクラウドファンディング・サービス「academist(アカデミスト)」を中心に、日本の研究環境の現状と問題点、解決策についてお話いただいた。

「他の研究者が何をしているのか知りたい」

講師の柴藤亮介氏はクラウドファンディングサイトを運営する株式会社エデュケーショナル・デザインの代表取締役。大学院を修了するまでは好きな物理学の研究に没頭。一方で、「他の分野の研究者は何をしているんだろう」という疑問を常々持っていたという。
「そこでさまざまな分野の研究者が集まる交流会を企画したり、大学院生向けの雑誌を発行したりしてたんです。そうしたら、やはりみんな他の研究者が何をやっているかわからないと思っていることがわかったんです」
確かにiPS細胞のようなノーベル賞級の研究はニュースになっても、普段研究者たちがどんな研究をしているのか、一般の人間がそれを知る機会や方法は乏しい。理由のひとつは「論文」。研究者は論文を書かない限りは評価されない。研究者たちはそれを書くのに忙しく一般向けの発信ができないのだという。
「もうひとつは研究費。日本学術振興会が配分する科研費は2500億円。これはいわゆる競争的資金で、研究者は申請が通って予算をもらった場合、だいたい5年の期間内に成果を挙げて国に報告する義務があります。こうなると、とても一般向けに情報発信している暇はないんですね」
予算がつくのは国家やその経済に役立つものが中心。そうなると数学や言語学、その他「知的好奇心に駆動された研究」などには予算がまわらない。各国立大学に給付される運営交付金も最近は年間100億円単位で下がっている。こうした研究者を取り巻く状況を「クラウドファンディング」の形で解決しようとしているのが柴藤氏が2014年4月に立ち上げた「日本初の学術系クラウドファンディングサイト」である『academist=アカデミスト』だ。

「クラウドファンディング」で研究費を集める

「クラウドファンディング」とは「アイデア実現のための資金をインターネットを通じて多数の支援者から集める手法」。『アカデミスト』ではこれを「学術にフォーカス」。サイトを開くと、各研究者のプロジェクトが並んでいて、閲覧者は興味のあるページに飛んで、記事や画像、動画でそのプロジェクトの中身を知ることができる。研究者はサイト閲覧者からの支援があった場合は支援金額に応じた「リターン」をするという「リターン購入型」のクラウドファンディングだ。『アカデミスト』ではこの1年半の間に19組の研究者が「目標金額」を達成。延べ1130人以上の支援者(サポーター)から1350万円以上の支援金が集まったという。
今回はいちばん最初の事例である京都大学フィールド科学教育センターの岡西政則氏(現・茨城大学助教)が取り組んでいる『深海生物テヅルモヅルの分類学的研究』を紹介。テヅルモヅルは深海に生息するヒトデの仲間で、その複雑に枝分かれした奇妙な姿が特徴的な生き物。岡西氏は長らく研究者が存在せず手つかずだったこの生物をDNAの比較によって分類しようという研究プロジェクトをアピール。500円から3万円までの金額に応じて「モヅルポロシャツ」や「モヅルパーカー」、「モヅル標本」などのユニークなリターンを用意したところ、全国の「テヅルモヅルファン」81人が支援。目標金額の40万円を超える63万4500円を集めて見事プロジェクトを成功へと導いた。達成後は東京で支援者を招いての「サイエンスカフェ」を実施。支援者と直接会うことは研究者本人にとっても大変な励みになったという。
2つ目の事例は『太陽フレアの機構と宇宙天気予報の研究』。岡西氏が若手研究者なのに対し、こちらは京都大学大学院付属天文台の天文台長である柴田一成氏のプロジェクト。「実は『アカデミスト』がスタートした時点では前例や実績がないため多くの研究者に参加を募ってもなかなか返答がもらえませんでした」と柴藤氏。とりわけ若い研究者は「研究室のボスの目」がこわくてチャレンジしにくい。そこで「天文台のボスならば」とお願いした相手が柴田氏。このプロジェクトでは327人のサポーターから総額373万7120円の支援を集めることができたという。リターンは、普通は手に入らない学会講演資料や特製の「太陽フレアエコバック」、「太陽フレアTシャツ」、「飛騨天文台に氏名掲載」、「柴田台長による花山天文台ツアー」など。実際にはこうした「リターン」には「不要という声もある」という。サポーターにアンケートを取ると、上位に来るのは「研究者を応援したいから」、「研究テーマに興味があったから」といった回答。ただ一方では「ツイッターに〈このリターンゲット!〉といった書き込みがあったりもする」という。
「本心は応援でもリターンがあると嬉しい。リターンはこれからも支援者の皆さんに喜ばれるものを考えていこうと思っています」

目指すのは「第二次オープンサイエンス革命」

セミナーではこの他、研究者と一緒にペルーで遺跡発掘ができるという『南米先史社会「シカン」の発展と衰退の謎を解明したい』、このセミナーの直前に終了した『カミナリ雲からの謎のガンマ線ビームを追え!』、クラウドファンディングで先行するアメリカの事例などを紹介。シリコンバレーに拠点を置く『アカデミスト』と同じ学術系サイトの『experiment』では4年間で346個もの「サクセス(目標達成)」を記録しているという。
「それと比べると我々はまだ19個。ただし達成率は彼らの46パーセントに対し『アカデミスト』は82パーセント。ここを強みにしたいですね」
『アカデミスト』の支援する研究は物理学、生物学、古生物学、地球科学、文化人類学、電気電子工学、生化学などさまざまな分野に及ぶ。その目標とするところはサイエンスを「オープン」なものにして「一般の人もアイデアを共有できる、新しい研究文化をつくること」だ。
「ガリレオの昔、研究者のパトロンである貴族たちは助成金をつける条件として成果を公表することを求めました。それが〈第一次オープンサイエンス革命〉。『アカデミスト』が目指すのは、いわば〈第二次オープンサイエンス革命〉といえるものです」
柴藤氏の「夢」は「『アカデミスト』を研究者が研究費を獲得しようと思ったときに、その選択肢として絶対に挙がってくるようなサービスにすること」だ。
「具体的には日本の研究費全体の1パーセントを目指していきたいですね」

講師紹介

柴藤 亮介(しばとう りょうすけ)
柴藤 亮介(しばとう りょうすけ)
(株)エデュケーショナル・デザイン
2014年に、日本で初めての学術系クラウドファンディングサイト「academist(アカデミスト)」をリリース。研究費獲得とアウトリーチ活動を両立できるサービスを目指して日々奮闘中。