d-labo

SURUGA d-labo. Bring your dream to reality. Draw my dream.

イベントレポート

イベントレポートTOP

2015年8月27日(木) 19:00~21:00

大橋 一広、藤田 和之 /

協創空間
~トランスボーダーなクリエイティブ・プラットフォームへの仕掛け~

私たちの働き方は変化し続けている。最近ではIT化が進み、モバイルデバイスとクラウドさえあればどこでも働けるようになってきている。変化が進む中でオフィスの在り方はどのようにあればいいのか?今回のd-laboセミナーでは、「クリエイティブ」を生み出すためのプラットフォームのコンセプト「trans.」と、 そのコンセプトを具現化したオープン・イノベーションの場である「SYNQA」を開発した株式会社イトーキの開発者をお招きし導入事例を交えながらお話しいただいた。オープン・イノベーションの場で実際に生み出されている「未来の会議」を支える人工知能システムについてもお話しいただいた。

これからのオフィスデザインとは

セミナーは「イトーキという会社の紹介」、および7月30日のセミナーでも触れた日本ユニシスとのコラボレーション事業である「クリエイティブな会議を加速するコモンセンス知識AI(人工知能)を活用した発想支援空間」のデモンストレーションという二部構成。前半は同社ICTソリューション企画推進部の大橋一広氏が、後半は若手の研究メンバーである藤田和之氏が担当。これからの企業のオフィスづくりやワークスタイルについてお話ししていただいた。

株式会社イトーキといえば、一般の人にはオフィス家具や学習デスクでよく知られた企業。創業は明治23年。当時の事業の主体は「博覧会などで紹介される外国の発明品や特許品を世に広める」こと。身近なところでいえばホッチキスや万年筆を普及させたのも同社だ。

「そういう意味では、イノベーション気質のある会社と言えますね」

ものづくりを始めたのは1908年。1950年以降は事務机や棚などの什器類を作るメーカーとして認知されていくようになる。1975年にはプロダクトだけではなくオフィス全体をシステマチックにデザインする場としての「オフィスプランセンター」を設立。現在ではハード面だけでなく空間としての企業のオフィスのデザインやワークスタイルの提案など、ソフト面の事業も展開している。そのなかでデジタル技術の進歩とともに近年重視されてきているのが大橋氏の担当している「情報」分野=ICT(インフォメーション&コミュニケーション&テクノロジー)部門だという。

企業のオフィスを年代ごとに見てみると、昔は「島型に机を集めて真ん中に電話が1台」といったスタイル。そこにパソコンが導入され、いまやそれもチームに1台の時代から1人1台以上の時代となった。同時に携帯電話も普及し、情報を得ることや連絡を取りあうことがより容易になった。それにともなって増えてきたのが部局や企業間を越えてのネットワーク型のプロジェクトだ。人々の働き方もこれまでの部署ごとの縦割りの仕事から横との連携へ。こうなると当然空間としてのオフィスに求められる条件も変わってくる。そこでイトーキが提案しているのが「みんなで新しいものを創る」ための「協創空間」だ。

求められているのは「新しい価値創造」のための「協創空間」

人が何か新しい企画や新しい商品を生み出すとき、ビジネスシーンとしてよく見られるのは「1人で集中してパソコンに向かう」、「書店やネットの検索での資料さがし」、「仲間とざっくばらんに話してのアイデア出し(ワイガヤ)」、「会議室での合意形成」の4つ。このうち前の2つは個人でやる仕事だが、後の2つは人とやる仕事だ。この4つの事象がきっちりうまくまわることで「トランスクリエイティブなコラボレーションによる仕事が実現する」という。キーワードとなる「トランス=trans」は、英語の「変容する」や「翻訳する」、「見える化」、「境界線を越える」といった言葉の接頭語として用いられている言葉。それ自体では「越えて」「ほかの状態へ、ほかの場所へ」といった意味を持つ。この「トランスクリエイティブなコラボレーション」でとくに大事なのは三番目の「ワイガヤ」。というのも、今は個人の仕事が見えない時代。昔のオフィスなら、各人の机の上に資料や書いたものが山積みになっていた。電話で話す声も筒抜けだった。上司や同僚はそれを見ていれば誰が何をしていて何で悩んでいるかがわかった。しかしパソコンやメールが普及してデータや取引先や顧客とのやりとりが見えなくなった現代、個人単位ではコミュニケーションが便利になった反面、それぞれの仕事は見えなくなり、人と人が直接会って話す場面も減った。いくらスカイプやテレビ電話が発達しても、互いに顔を見ながら話すことほど「リッチなコミュニケーション」はない。そこで「もっとコミュニケーションして価値創造しよう」ということで求められるようになったのが「ワイガヤ」が可能な協創空間だ。人は堅苦しい雰囲気の会議室よりもカフェのような場の方が気楽に話せるしアイデアも湧く。こうした時代のニーズに合わせて最近のオフィスはオープンでカジュアルな空間になりつつある。2012年にイトーキが京橋にオープンした『SYNQA』はそのモデルたる施設。1階は会員なら誰でも利用可能なサテライトカフェ、2階は共同プロジェクト用の会議室、3階は大橋氏の働いているフリーアドレスのオフィス。ここではスタッフに決まったデスクはなく、仕事の内容に応じて場所を選んで業務を行なっているという。

「これからはモバイル機器を使えば在宅勤務ができる時代。収束思考的な報告連絡会議や合意形成会議もバーチャルでできる時代になると思います。そうなるとリアルで必要になってくるのはアイデア会議などの発散会議をする場。オフィス設計ではこのような協創空間型のオフィスをプランニングさせていただく機会が増えていくと思います」

こうした動きは企業に限らず学校現場でも起きている。教師にただ教科書の内容を教わるのではなく、児童や生徒同士がディスカッションして学ぶのが今の教育。そうした場にはそれに見合ったプラットフォームが必要だ。

AI=人工知能が会議に参加する時代へ

セミナー後半では藤田氏がd-laboに展示している人工知能を活用したテーブルを紹介。日本ユニシスの研究開発した人工知能モデル(コモンセンス知識AI)とディスプレイを埋め込んだテーブル型のデモ機は、会議の場においてAIが人間の話す音声をもとに関連用語をどんどんディスプレイし、会議での発想を支援していくといったもの。言ってみれば人工知能は「もうひとりの参加者」。現在はまだ開発中だが、その会議が盛り上がっているか、あるいは停滞しているかなどを判断して提示する用語の内容も変わるというシステムが採用されている。たとえば参加者が同じ言葉を何度か発すれば人工知能はその言葉を重要なキーワードとして認識し、それに関連する類似語や連想語、特徴語などを次々に表示する。会議が停滞気味のときなどは、わざと類似度の低い言葉を出して発想の転換を促すなど、場面に合った対応をしてくれる。

「人工知能がどこまで介入するかは状況に応じて人工知能自身が判断するように。学習できる人工知能にしたいですね(藤田氏)」

藤田氏の「夢」は「自分の創ったサービスや製品が普及すること」。大橋氏は「好奇心を満たせる仕事をすること」。

「いろいろなアイデアを持った人たちが集まって新しいものを創ってそれが実現できたら。。それがひとつの夢ですね」  

講師紹介

大橋 一広、藤田 和之
大橋 一広、藤田 和之

大橋 一広(おおはし かずひろ)
1993年 株式会社イトーキに入社。ミュージアムやショールームの企画・展示空間設計に従事し、コミュニケーションデザインを担当。
2004年からワークプレイスの研究開発、新規市場開発を担当し、次世代クリエイティブワーク・コンセプトメイクに従事する。
2015年現在、ICTを活用したメディアデザイン、事業企画、商品開発を統括するICTソリューション企画推進部長。

藤田 和之(ふじた かずゆき)
2013年 株式会社イトーキに入社。
現在、ICTソリューション企画推進部に所属し、ICTを活用したメディア&コンテンツ・デザインや事業企画の業務に従事。人工知能を活用した近未来会議環境を研究開発中。情報科学博士。