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イベントレポート

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2015年5月16日(土) 14:00~16:30

橋本 元司(はしもと もとじ)  / 新価値創造研究所代表

ビジネスパーソンのための「仕事と人生に活かす3つのリアル価値創造法」
~ワークショップで、楽しく交流しながらスキルアップ~

激変するビジネス環境の中、私たちには、新しい時代に適応した発想を生み出すことができる「イノベーティブ・スキル」が求められています。それは、①人を読み(Insight)、②先を読み(Foresight)、③新しい全体を読む(Gestalt)という3つの方法から発想を生み出す技術です。今回は、日本の手法(ワビサビ、守破離、間)を組み入れながら、「イノベーティブ・スキル」を 習得するためのワークショップを開催。橋本氏が今まで新しい発想を生み出してきた具体的事例を通して、参加者全員で楽しく交流・創発しながら習得する機会となった。

顧客のニーズを知りたければ「目ではなく心を使う」こと

前職のパイオニアでは「社長に直訴して」始めたという「ヒット商品緊急開発プロジェクト」や、「創造型の人材育成」「新事業創出」に尽力してきたという橋本元司氏。プロジェクトではサントリーとのコラボレーションであるウイスキーの樽材でつくったスピーカー『樽物語・ピュアモルトスピーカー』をはじめ、ヒット商品を次々に開発。退社後の現在は、その経験を生かして「新価値創造研究所」を運営。イノベーティブな人材づくりと事業創出に取り組んでいる。今回のセミナーではその橋本氏に、通常3日間を要するという「リアル価値を創造するため」のワークショップを開催していただいた。

「新価値創造」でもっとも大切なのは「殻を破ること」。固くなった殻を破りイノベーションを起こすには「3つの方法があります」と橋本氏。

「3つの方法はいわば3本の矢。1本目は〈インサイト=深く人を読む〉。2本目は〈フォーサイト=高く未来を読む〉。そして3本目が〈ゲシュタルト=広く全体を読む〉です」

ビジネスとは「顧客に価値を提供して、顧客から対価をいただくこと」。そこでイノベーション同様に求められるのが「マーケティング」だ。市場のニーズを読みとるには「我々は何を売りたいか」という企業側の視点ではなく「顧客は何を求めているのか」という消費者側の視点がほしい。人気のテンピュール枕であれば消費者が求めるのは「快適な睡眠」であり、スターバックスであれば消費者がコーヒーとともに得られるのは「家でも職場でもない第三の場所」。こうしたニーズに応えた「価値」を提供することができるかどうか、そこが企業には問われている。

「マーケティングで大切なのは、インサイトによってニーズの本質を捉えることです」

ひとくちに「ニーズ」といっても、実は心理学上は3つの階層があるという。一番下は「こんなものがほしい」という「Haveニーズ」、二番目は「こういうふうに使いたい」という「Doニーズ」、その上にあるのが「本当はこういうものがほしい」という本音である「Beニーズ」だ。顧客自身ですら訊かれても「わからない」と答えるのがこの奥にある「Beニーズ」。これを捉えるには「お客さんを観察すること」。例えば掃除に便利なクイックルワイパー。この商品に対する顧客のニーズを探ると、実は奥底の部分にあるのは「本当は掃除なんかしたくない」という本音であったりする。ここで橋本氏が引用したのは『星の王子様』の一文。

「サン・テグジュベリは〈心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ〉と書いています。ニーズを知りたければ目ではなく心を使うことですね」

「大切なものを引く」ことでヒット商品を生み出してきた日本人

「ヒット商品」を生み出すとき、日本人がもっとも得意としているのは「引くこと」。

アルコールフリーのビール系飲料は「ビールからいちばん大事なアルコールを抜いた」ものだし、NHKのアンケートで「見たい国宝」の1位になった長谷川等伯の『松林図屏風』は西洋画のようにびっしりと描き込むことがなく、見る者がその世界に入り込める余白が設けてある。龍安寺石庭に代表される枯山水は「水を感じる」ためにあえて水を抜いてある。カラオケもまた「歌=ボーカル」という大切なものを抜いたことで大ヒットし、ひとつの文化となった。これらはすべて「禅の思想」。執着や先入観といったものを取り払う、あるいはいちばん大事なものを手放す。実はそうすることで新しいものはできるという。

参加者は3つのチームに分かれてワークショップを体験。まずは頭をやわらかくするアイスブレイクを経て、本格的な演習に挑戦。今回は「日本最大のレシピ投稿サイト」であるクックパッドの紹介ビデオを観て、「クックパッドがもっとも大切にしている価値観」について考えてみた。出てきた答は「料理の楽しさを思い出させる。そのプラットフォームをネットの空間に創り出すこと」、「情報を提供すること」、「利用者に参加させること」など。こうしたグループでの討論はそれ自体が参加者にとっては貴重な体験。人と話すことで自分とは違う新鮮な考え方に触れることができるからだ。

ワークショップの後半は「イノベーション」がメイン。イノベーションとは「新結合」のこと。既存のものを組み合わせて新しい価値をつくり経済を発展させることを指す。世界を変えたグーテンベルクの活版印刷はそれまであった刻印機にワイン農家の使うブドウ絞り機を組み合わせて誕生したもの。近いところで言うならiPhoneは、それまではバラバラであった「通信」や「デジカメ」や「音楽プレイヤー」をシームレスでひとつにまとめて世界を席巻した。橋本氏が世に送り出した『樽物語』もまた、ウイスキーと音楽を掛け合わせてできたもの。こうしたものを生み出すには「ゲシュタルト=広く世界を読む」と同時に「出会った人との御縁を大切にする」ことが大事だという。

未来を読みたければ過去を見ること

では「フォーサイト=高く未来を読む」にはどうすればいいか。コツは「弁証法で過去を見ること」だ。「温故知新」という言葉があるように、過去を見ることは「よき未来」をつくるヒントとなる。工業化社会の日本では一律的教育をしてきたが、最近ではさまざまな弊害が発生している。これを解決するひとつの方法が個別教育。その参考となるのは、江戸時代の寺子屋だったりする。同じようにコンビニの未来を読むときに思い出されるのは、かつてあった「万屋(よろずや)」。こんなふうに「過去にあったものが新しい価値をともなって復活すること」、それを弁証法では「螺旋的発展」と呼ぶ。

最近のビジネスを見ると、目立つのは顧客の「参加志向」だ。かつての工業時代は「モノづくり=ハードウェア」が主流。情報時代はそこにプラスして経験や体験を得られる「コトづくり=ソフトウェア&サービス」が求められた。そして、これから武器になるのは日本の文化である「おもてなし」の心だ。「おもてなし」とは「しつらい」と「ふるまい」と「心づかい(=ハートウェア)」の3つからなるもの。この3つをつなげてプロデュースできる人が求められている。「モノ」だけではなく「コト」と「心」。顧客は「素敵な物語や舞台があれば参加したがっている」。そのためにも「おもてなし」の心は常に持っていたい。

橋本氏の「夢」は「日本をたくさんの人達がイノベーション(価値創造)できる国にすること」。

「GDPとは別に、幸せかどうかという部分でナンバーワンの国にしたいですね」

講師紹介

橋本 元司(はしもと もとじ) 
橋本 元司(はしもと もとじ) 
新価値創造研究所代表
1977年早稲田大学理工学部卒業、パイオニア㈱にて、商品設計、技術企画、開発企画等の各部門を経験した後、 社長直轄「ヒット商品緊急開発プロジェクト」のプロジェクトリーダーとして、すべて異業種コラボレーションによるヒット商品をプロデュース。 その後、マーケティングとイノベーションを融合した「新価値推進センター」の所長として、中長期シナリオプランニングを監修。 更に、「新事業創出プロジェクト」および「創造型人材開発プロジェクト」のリーダーとして、両プログラムの企画開発とプロジェクトを実行する。 2013年に新価値創造研究所を設立し、現職。