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イベントレポート

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2014年11月25日(火)19:00~21:00

岩瀬 大輔(いわせ だいすけ) / ライフネット生命保険株式会社 代表取締役社長兼COO

僕が「ライフネット生命」立ち上げから学んだこと

2013年、生命保険会社の中で最年少の社長となった岩瀬氏は、2008年の開業時から現在までのライフネット生命の歩みを通して、人生やキャリアについて数多くのことを学んだ。今回は、そんな若き経営者の岩瀬氏をお招きし、投資家やステークホルダーとの信頼関係の築き方、新しいビジネスを軌道に乗せる苦労、自分の強みを活かして人生を存分に生きるコツ、そして思い切って活動するための「転ばぬ先の杖としての生命保険の考え方」について熱く語っていただいた。

MBA留学で学んだこと

「今日はライフネット生命という会社がどういうふうにできたか、舞台裏みたいな話をしたいと思います」
日本生命出身の出口治明氏とともに、30歳という若さでライフネット生命を立ち上げ、保険業界に革命を起こした岩瀬大輔氏。このセミナーでは「保険に関してはド素人だった」という岩瀬氏がいかにして新たな生命保険会社を設立し、事業を軌道に乗せたか、「ことの始まり」である米国留学時代にまで遡って語っていただいた。
元々は外資系のコンサルティング会社でサラリーマンをしていた岩瀬氏がハーバード大学経営大学院に留学したのは28歳のとき。このときに自分に課したのは「復習」の意味を込めてのブログ執筆だったという。「MBA留学をした人に話を聞くと、よく覚えていないけどすごく楽しかった、という感想が多いんですね。みんな予習には必死だけど本番が終わると何を勉強したのか忘れてしまう。僕は社会人の学びというのは知識として定着させないと意味がないのではと思って、復習としてブログに気付いたことや感じたことを書き留めていったのです」
MBAのカリキュラムは「リーダーシップと組織行動論」、「マーケティング」、「会計」など。だが、実際に学んだものは「もっと深かった」。留学先でよく聞かれたのは、“What are your principles?”=「お前のプリンシプルは何だ?」。「プリンシプル」とは、「信念」や「ぶれない軸」といったようなもの。留学中はおのずと「自分にとって大切なものは何か」、「ビジネスパーソンとしてどう生きていくか」といったことを考えるようになったという。ベンチャーの盛んなアメリカにいることでアントレプレナー(起業家)精神も触発された。80か国以上の学生が集まる経営大学院にいると、インターネットによって「グローバル化する世界」も否応なく感じる。夏休みのインターンでは「資本主義の権化」のようなヘッジファンドで「行きすぎた金融資本主義」について考えさせられた。そうしたなか、完成まで100年200年とかかるような「大聖堂を建てる仕事」、現代で言うならCSR(企業の社会的責任)に携わる社会起業家のようなコツコツとした仕事への関心も湧いた。いろいろと考え、学んだなかで見出したひとつの結論は、「人生は大陸を鉄道で横断する旅」と似ているということ。
「目的地に早く辿り着くよりも、そのプロセスを楽しむ。MBA留学というのは、卒業直後はみんな意気揚々としているのですが、10年も経つと思わぬことで振り回されていたりする。そういった未来に対して心の準備をしておかねばと思ったんですね」

ブログが呼んだ出会い。「新しい生保の会社」を立ち上げる

岩瀬氏の場合、いい意味での「思わぬこと」が在学中から起こった。卒業を半年後に控えた2006年の1月、日本に一時帰国した際、あすかアセットマネジメントの谷家衛氏に出会った。「君のブログを読んでいた」という谷家氏は「日本には挑戦する起業家が足りない。応援するから一緒にやろう」とまだ若い岩瀬氏に起業をすすめてきた。このときのポイントは「何をやるかが決まっていない」ところ。いきなりの話に戸惑う岩瀬氏に谷家氏は「一回きりしかない人生なんだから、自分自身の個性とエッジを活かした生き方をすべきじゃないか」とたたみかけた。これが岩瀬氏の心に「響いた」。ボストンに帰っても、谷家氏は「出張をつくって」追いかけてきた。
そして、彼の口から出たのは「岩瀬君は保険がいいと思うんだよね」という思わぬ一言だった。それまで保険については何も知らなかった岩瀬氏だが、直感的に「おもしろそうだな」と感じた。そこで、再び日本に一時帰国した際、谷家氏から紹介されたのが出口氏だった。当時は保険金の不払い問題で生命保険会社への信頼が揺らいでいた時期。「生命保険というのは、いつの時代も健全な市民社会を支えるべき非常に大切なもの」であるのに「社会の信頼を失ってしまった」と語る出口氏は、「新しい生保の会社を立ち上げたい」という自らのアイデアを披露した。
「出口は歴史オタクと呼べるほど歴史に詳しい。彼に言わせれば、いつの時代も革新というものは異質なものとの競争によって生まれてきた、というんですね」

起業家精神とは「世の中が求めているものを追いかけること」

小さいかもしれないけれど、とびきりいい会社をつくって業界を刺激したい。狙うのは、これまでにない「消費者の立場に立った安いビジネスモデル」。そこで準備会社を設立し、132億円という資金を調達。そして、2008年5月にライフネット生命が開業した。スタート時はお手ごろな保険料設定にも関わらず業績は低迷。が、中間決算時に発表した「生命保険の原価開示」が話題となり、その認知度は急上昇した。おもいきった開示に他社は慌てたが、なかには個人的に「応援します」とコメントを寄せる業界関係者もいた。生命保険は「昭和のビジネスモデル」。それを変えて現代に見合ったサービスを提供するにはおもいきった手段が必要だった。他にも、街に出てのチラシ配りやメディア出演など「できることは何でもやった」。もっとも大切したのは「チームワーク」。出口氏と岩瀬氏は父と息子ほどの年齢差だが、「気の合う者同士なら年齢は関係ない」。現在の社員は約90名。組織としての目標は「社員が心底会社に行きたいと思ってもらえる会社をつくること」だ。
この仕事を始めて「ベンチャー経営者の仲間に入った」岩瀬氏。そこで感じるのは「ベンチャー経営者は世の中を見つめる目が違う」ということだという。起業家精神とは「世の中の人が求めるものを追いかけていくこと」。
「何か不便なことがあったとしたら、それを受け入れるのではなく、不便ならつくってしまえと行動を起こすのが起業家。ベンチャーは能力ではなく着眼点、それと、かりに根拠はなくても自分にはやれるんだという自信があればできるんです。こういうマインドの人が増えれば、日本にももっと起業家が生まれるのではないでしょうか」
講演のあとは質疑応答、そして「知っておくとお得な保険の話」へ。最近、年の近い友人を亡くしたという岩瀬氏。「いざというときの保険は大事。たとえ煙たがられても保険会社の人間はそれを言わなければならないと感じました」という思いを聞いて終了した。

講師紹介

岩瀬 大輔(いわせ だいすけ)
岩瀬 大輔(いわせ だいすけ)
ライフネット生命保険株式会社 代表取締役社長兼COO
1976年、埼玉県生まれ。幼少期を英国で過ごす。東京大学法学部を卒業後、ボストン・コンサルティング・グループのリップルウッド・ジャパン(現RHJインターナショナル)を経て、ハーバード大学経営大学院に留学。同校を日本人では4人目となる上位5%の成績で修了(ベイカー・スカラー)。2006年、副社長としてライフネット生命保険を立ち上げる。2013年6月より現職。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2010」選出。