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イベントレポート

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2012年11月1日(木) 19:00~21:00

松田 光一(まつだ こういち) / グラフィック・アーティスト

夢を叶える絵
 ー世界遺産を描く旅よりー

"世界遺産"とは、人類が築いてきたかけがいのない文明や歴史によって生み出され、過去から現在へと引き継がれてきた宝物。松田氏はそんな世界遺産に魅力を感じ、世界遺産をモチーフにした絵を描き続けてきた。「世界遺産の絵を通じて人々を繋ぐ平和の心を創りたい」と夢を語る同氏に、楽しくて不思議な世界遺産アートへの熱い想い、そして同氏流の絵画の描き方などを作品とともにお話しいただく。

「今日は夢を叶えるきっかけづくりの時間に」

国内外の世界遺産をスケッチし、コンピューターを駆使したグラフィックアートに仕上げている松田光一氏。その肩書は「グラフィック・アーティスト」。日本語だと「画家」。
「僕はまだ32歳。夢の途中にある人間です」と語る松田氏が今日のセミナーでテーマとしたのは「夢を叶える絵」だ。
「せっかくのd-laboという場所なのですから、今日はみなさんにとっても夢を叶えるきっかけづくりとなる2時間にしたいと思います」
こんなふうに始まったセミナーは、参加者が現在や過去を語ったり、互いにヒアリングをしたり、自分の夢を絵に描いてみるといったワークショップ的な内容となった。
冒頭は松田氏の簡単な自己紹介から。それにパリを描いた代表作についての話。会場にも持ち込まれたこの作品は「生まれて初めて母にほめられた絵」だったという。子供の頃から絵を描いていた松田氏だったが、母親にはいつも「お前の絵はいけていない」と酷評されていた。長じて大阪芸術大学で絵を学んだときもほめられることはなかった。だが、本当に描きたいという強いおもいから世界遺産を絵にしたみたところ、「これはいい」と母自ら買ってくれた。あの母が自分の絵を気に入ってくれた。まだ不安と迷いのなかにいた自分が「画家を自分の生き方にしてもいいのでは」と思った瞬間だったという。
「だから、今日持って来たこの絵は母からの借り物なんです」
ジョークのような真実に、会場が笑いに包まれた。松田氏は和歌山出身。「紀州弁と関東弁がごっちゃになった」独特の語り口はユーモアに溢れている。

自分の「過去」には「夢」のヒントが隠されている

「今日は、現在、過去、未来という3つに沿って話をしていきます。まずは現在から」
現在の松田氏は世界遺産をテーマにアート活動をつづけている。コンセプトは「国境を越えて世界をもっと大切にする心をつくる」。カラフルでファンタジー性のある作風は女性を中心に人気が高い。そこには「みんなもっと地球を楽しもうよ」、「世界中のみんながちょっとでもほっとできるような絵が描きたい」というアーティストとしてのおもいがある。会社員をやめて専業画家となって3年あまり。その間に描いた作品は約450点。マチュピチュやグランドキャニオン、カッパドキア、モンサンミシェル、屋久島など、これまでに足を運んだ世界遺産の絵が紹介されると、その美しさに会場からはため息がもれた。
「僕のスタイルはマインドタッチ。ペンでさらさらと、自分が感じたように描きます」
下絵には30分もかからない。それをパソコンに取り込んで色をつける。仕上げは発色の美しさと耐久性の高さが特徴であるジークレーと呼ばれる版画複製技法を用い数量限定の「作品」とする。このスタイルが「板についている」という。
画家としての活動はスケッチ旅行と作品制作の他に、全国各地で個展を開催。企業とのコラボレーションによる作品のプロダクト化も進めている。今年は熊野古道を舞台に初めて子供たちを対象に絵の教室も開いた。これが松田氏の「現在」だ。
ここで参加者同士のヒアリングタイム。隣合った人同士で「あなたは今何をやっていますか」と情報交換をしてもらった。ある女性参加者が「子育てをしながら建築の図面を引いている」という「現在」を話すと夢を体現した暮らしに、会場には拍手が起こった。
次は松田氏が画家となる前の「過去」について。20代後半の松田氏はサラリーマンを続けながら「これでいいのか」と悩んでいた。そこで28歳のとき、自分の未来を絵にしてみた。パネルに映し出されたのは、楽しそうに世界を股にかけている自分。
「バカっぽい絵ですけれど、こうやって夢を絵に描くと叶ったりするものなんです」
初めて絵を描いたのは3歳のころ。製図の仕事をしていた父親が持ち帰る図面の裏にロボットの絵などを描いた。家族や親戚は油絵や漫画、写真などを趣味や仕事にしている芸術系一家。「これだったら絵を描くだろう」といった環境に育った。そんな松田氏の学生時代の作品は派手な色づかいの大作揃い。一風変わった絵を描く学生として教授陣からは注目されていた。ただ、自分ではプロの画家になれるとは思っていなかった。大学卒業後はマーケティングの仕事をした。それがどんどん「世界を描きたい」という思いが募り、ついには会社を飛び出した。世界遺産を題材に選んだのは「そこに行けば間違いなく素敵な風景に出会える」とわかっていたからだという。
「過去にはヒントが隠れている」と松田氏。
「自分が何者であるのか。何をやればいいのか。過去を振り返ればそれがわかると思うんです。」
ある女性参加者の「過去」は「船での地球一周」。旅の間は「現地の人と必ず話す」、「写真を撮る」ことを心掛けていたという。そうした素敵な「過去」が今の自分をつくっているし、この先何をやっていけばいいのかも教えてくれる。まさに過去は「夢」の「ヒント」だ。

それぞれが描く「未来の夢」

そして「未来」。夢を叶えるためには「ライフコンセプト」を創るといい。このとき使えるのが英語の5W1H。自分が好きなものは何か。それをどういう形で成し遂げたいのか。どこで夢を叶えるのか。夢を叶えたとき、自分のほかに誰がハッピーになるのか。いつ夢を叶えるのか。費用はどれだけかかるのか。こうしたライフコンセプトを書いて「私はこれをする」と声に出してみる。
「実は夢は自分で叶えるのではなく、誰かが叶えてくれるものなんです。僕の場合は画家になると声にしたことで、協力者や個展の機会、コラボ企画の話などに恵まれました。」
夢の「シェア」は夢実現の早道だ。
最後は参加者それぞれが「夢を叶える絵」を描くという時間。15分ほどの間に全員が自分の未来を絵に描いた。「どんな絵を描きましたか」という質問に、男性参加者の1人は「世界中を家族や友人と旅して出会った人たちとサッカーをする。酒を飲み、みんなで笑い合いたい。」と、今日のテーマにぴったりな自分の絵を紹介してくれた。
夢を語りつづけ、全員で考えた2時間。幕を閉じるにあたっては松田氏の人生における最終的な夢は何か訊いてみた。
「歳をとっておじいちゃんになったら宇宙に出て地球を描きたいですね。」
画家は職業である前に生き方。その日が来るまで画家で在りつづけたいという。

講師紹介

松田 光一(まつだ こういち)
松田 光一(まつだ こういち)
グラフィック・アーティスト
人類共通の宝物である「世界遺産」をモチーフにした絵をマーカースケッチとコンピューターグラフィックを使って描く画家。2010年から「World Heritage Art」(世界遺産アート)という自身のブランドを立ち上げ、現在も活動を続けている。活動の目的は、“国境を越えて世界を大切にする心”を創ること。